取り敢えず、とレイシェーアは鉄槌を消した。
【人間種】15人分の場所は軽く取るであろう巨大なそれは【人間種】の街をレイシェーアが引きずるだけで壊しかねない。
【天妖種】-滅茶苦茶な力を持つ破滅の具現とも言えるそれと【人間種】の外見を持ったバケモノ。だが、感性は限りなく【人間種】に近い。
だから【人間種】に共感も出来るし、もし【人間種】、もしくはそれ以上に頭が良かったら会議のひとつやふたつ余裕で開けていた。
しかし【亜人種】-【人間種】の身体に【天妖種】の魔力量は耐えきれない。だから知能が吹っ飛んだ。
知能が吹っ飛び-全身に本来ならその身体が魔力に篭ったマナやマナを形成する精霊により蒸発する量を上手いこと『本能で』押さえつけている。
つまり、【亜人種】は常にその身に宿す膨大な量の魔力を【人間種】の身体-己の肉体が耐えられるように強制的に抑制し、それを効率的に使っているのだ。
………レイシェーアの怪力は魔法などの類は不使用なのだが。
レイシェーア曰く「【亜人種】は基本的に肉体強化魔法をずーっとかけてるようなもんだから、それがもう定着していくんだよね私ぐらいの歳になると」とのこと。
つまり初めは魔法を使ってこその怪力らしいが、歳を重ねるごとに魔法を使うことなく勝手に肉体強化が施されるらしい。
全く、何とも破茶滅茶で未完全『すぎた』種族だ。
知識欲ならレグジェに負けず劣らずのフリューレまでもが理解らないことだ。
無論レグジェもである。
142.9cm、大人にしては小柄な体型のレイシェーアが言う。
たしかにレイシェーアは小さい。
それは恐らく【人間種】の体が発達することがあまりなかったからだ。
それが何故かと問われると-【天妖種】の血が多かったと言う以外答えはあるまい。
【人間種】の身体に【天妖種】の魔力。
そしてその血量の比が9:1や7:3ならまだ知能も吹き飛ぶことは無かった筈なのだが-どうやら比率はそれが真逆になっているようなものらしい。
【天魔】-【悪魔種】きっての異端児フリューレは哀れみの目でレイシェーアを見た。
【天魔】-【悪魔種】の中でも特殊な性質を持つ、【悪魔種】の中でも魔力量の高い『完全魔法生命体』。
魂そのものが魔法で出来ている【天魔】は魂に質量はなく、その魂の源はただの超複雑な原始の生命術式を応用したものにほかならない。
また、魔法で出来た魂のため、基本的に寿命はない。
そして死への恐怖もないという。
亜人語をペラペラと会話する2人と、その内容を8割理解できるフリューレの様子は【人間種】には異様に見えただろう。
【悪魔種】、(元)【吸血種】、【亜人種】の序列も違えば話す言語も違う3種族が友好関係にあるのだから。
3人はレグジェの一言で皆違う所へテレポートした。
ティフォの家-機械城と呼んでも過言では無い、機械だらけの広々とした屋敷。
ティフォの部屋は特に天井の機械が緻密すぎて歯車の噛み合う様子がひとつの模様になっているまでだ。
序列八位、【世聖霊種】殺しの種族のひとつ。
序列二位【天使種】、【悪魔種】と八位【天妖種】、そして四位【聖霊種】は【世聖霊種】殺し-世界を終わらせる種族と呼ばれている。
【聖霊種】(ホーリーエレイス)-名前だけは神聖な雰囲気を醸し出している。たしかに、三位【宙棲】や一位【世聖霊種】の使いではあったが、どういうことか【聖霊種】はそれらを虐殺した。
勿論反撃を食らい、今生き残っている【聖霊種】は小学生でも数えられる程度しかいないらしい。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!