第27話

姉妹
24
2018/03/04 09:40
シュヴェ
シュヴェ
ティフォ〜!
会いたかった会いたかった会いたかった〜!
ティフォ
ティフォ
…!?
シュヴェ……変
機械城-ベッドで大人しく日記を書き綴っていたティフォに抱きつくのは姉、シュヴェ。
つい先日【最果ての世界】との同化を拒絶してからというもの、感情を理解したらしくそれに対する嬉しさが止まらない。
シュヴェ
シュヴェ
シュヴェね、お姉ちゃんね!
感情がわかったの、ほんとだよ!!
嬉しそうに、笑顔に、興奮気味で-シュヴェはティフォに言う。
感情を既知しているティフォは困惑しつつもシュヴェが感情を知ったことに対しては嬉しく思っていた。
ティフォ
ティフォ
よ、良かったね…
【人間種】なら絞殺される勢いでシュヴェはティフォを抱きしめる。
しかし鋼鉄の体のティフォには『その程度の力』と思うだけだ。
シュヴェ
シュヴェ
悲しみ、苦しみ、嬉しさ、楽しさ-わからなければいけないことを、シュヴェは今の今までわからなかった。
ああ、なんて愚か…!
-これ、壊れてるって言った方が良くないか?
ティフォは哀れみの目でシュヴェを見る。
たしかに感情を得たばかりの頃はそれを愛おしく思ったし、手放したくないとも思った。
けれど夫の死に直面したときはこんなもの要らない、どうせなら感情なんてないままで良かったと、いっそ自分も死なせてくれと-永遠を生きる生命体には叶わない願いまで願ったものだ。
ソウルを喰らったのも、すべてはこの悲しみと夫の願い故。
生命の源を、夫そのものを喰らったようなものなのだ。
ティフォ
ティフォ
………いいことも、悪いこともある
シュヴェ
シュヴェ
…………?
ティフォは冷たい声で、ぽつぽつと言葉をこぼすように話す。
ティフォ
ティフォ
感情………機械、知る必要ない…知ったところ、で……何も…得られない…悲しみを前、に…途方に暮れる
シュヴェ
シュヴェ
…………シュヴェは違うと『思う』
ティフォの言葉にシュヴェは反論する。
シュヴェ
シュヴェ
シュヴェはその悲しみも、全て貴重な体験と判断、何も途方に暮れる必要はない
-、
シュヴェ
シュヴェ
感情を知る必要は、我ら機械には大いにある
-でも、
シュヴェ
シュヴェ
機械はただの道具に過ぎない。
シュヴェ達は…【ペルシュレーゼ】は心を、感情を知って…ひとつの生命として生きるの
-それは、
シュヴェ
シュヴェ
『ケンプファルジェン』のシュヴェでも理解ったんだよ、ティフォ。
感情は、多分そんなに難しくない!
-我々機械にとってあまりに無謀で、
シュヴェ
シュヴェ
お母さんにも教えてあげたいな〜
ティフォ
ティフォ
……お母さんは、とっくの昔に『再起不能機体』になった
シュヴェ
シュヴェ
………………………え?
-我々機械にとって、大きな負担をもたらす『禍』なのだ-と…。
シュヴェの脳内が、体内に張り巡らされた血管とも言える電子回路が、それらすべてがティフォの言葉を聞いてショートしかける。
シュヴェ
シュヴェ
………う、そ…………………なんで?
シュヴェの目から光が消えていく。
笑顔が消えていく。
悲しみが満ちていく。
絶望が追い打ちをかける。
ああ、痛い。
心、が…痛い。
ティフォ
ティフォ
…ティフォが悪い
顔を背けて、ティフォがそっと呟く。
シュヴェ
シュヴェ
………ティフォ、殺した……………の……?
手が、足が、全身が震える。
この震えはなんだ、と。
ああ、これがひとつの感情による震えかと。
シュヴェは理解した上で、ティフォに刃向かう。
ティフォ
ティフォ
…!
ティフォの首を締め付ける。
でも、怒りは止まらない。
まして、自分の力でどうともならない『同族』(ティフォ)に対する憎悪が増すばかりだ。
シュヴェ
シュヴェ
………………
ティフォ
ティフォ
………………な、何?
機械としての耐用年数を何万年と超え、でも、生命体としてはまだまだ先の長いティフォは-怯えていた。
姉の怒り。それをぶつけられる自分。
姉の怒りの理由がわからない。
でも、一番怖いのは-
ティフォ
ティフォ
…何か話して
シュヴェ
シュヴェ
……………
何も話さないまま、ただ自分の顔を見つめたままありったけの力で自分の首を絞めてくる姉の姿だった。
ティフォ
ティフォ
…………
シュヴェ
シュヴェ
………………
埒が明かない、とティフォもシュヴェの首を絞める。
だが-『ケンプファルジェン』とただの計算、解析特化機体では力の差が大きい。
ティフォ
ティフォ
………【霊撃】(ソウルバースト)…ッ!
シュヴェ
シュヴェ
…!?
………ティフォがその気なら…シュヴェも勿論-【星空】『宇宙の胎動』(ピュリフェ・セラーテ)
二機の力がぶつかり合い-閃光が走った。

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