ティフォの初手-『深怨業火』は炎と共に生きる悪魔、【火魔】の模倣兵装だ。
火弾とそれに混ざって飛ぶ無数の剣にレグジェは苦笑いする。
魔神でなくても強い悪魔は本当に強い。
力が、じゃなくて技がだ。
技のバラエティ、火力、コスト効率がすべていい。
【火魔】はそういった魔力操作などが非常に上手い悪魔だ。
だがそんなティフォの兵装をレグジェの詠唱必須魔術『天罰』はすべて吹き飛ばしまっすぐティフォの方へと向かう。
空間を捻じ曲げて別のところへ移動する-天使と悪魔、両方の性質を持つ悪魔【天魔】の模倣兵装でティフォは回避するが-
レグジェによって操作された魔術はティフォの移動位置を予測して方向転換、見事ティフォの移動位置の目の前にあった。
ティフォはそれを少し焦った表情になりながらも模倣したレグジェの『天罰』で相殺する。
模倣したとはいえ基本出力は約69%、最大で90%になる。69%でも相殺できるということは-レグジェはまだ口先だけだ。
-短期決戦のつもりなのか。
レグジェにしか使えない鍵-【歴難錠】(れきなんじょう)のひとつを使った。
【歴難錠】とは、本来はログジェが管理するはずだったもので強大な力を秘めた、過去を記録した鍵のことだ。能力的にもログジェが最適と思われたのだが何故かログジェは扱えず、妹-未来視が出来るレグジェが扱えていた。
物理、精霊の六属性の力を宿した【六導の歴難錠】、
夢と幻、希望を宿した【夢幻の歴難錠】、
原子の力を宿した【破滅の鍵】-【原始の歴難錠】、
彗星のごとき破壊力を宿した【彗力の歴難錠】、
すべての魔の力を宿した【最凶の歴難錠】、
生命の源の力を宿した、【破滅の鍵】と対になる【祝福の鍵】-【生煌の歴難錠】の6つが現存するすべての歴難錠で、以前は9つあったらしい。
レグジェはすべて扱うことが出来、以前あった3つ全てを破壊した張本人でもある。
その理由については後日レグジェが思い出してまた日記に綴ることになるだろう-
【歴難錠】の力はどんな力を持つ悪魔でも天使でも人間でも機械でも-そして神でも遮ることは不可能。それを思い知らせるのがティフォという存在だ。
ティフォは機械であり悪魔、そして【闇魔神】というひとりの魔神-神でもある。それなのに、【夢幻の歴難錠・ティアルティア・フォルフォート】の幻覚を厄介だと言いどうにもすることが出来ない。
レグジェや鍵を扱える術者には効かないというのが最高にいやらしい。
ティフォは苦笑いするとまたひとつ模倣兵装を起動させた。
短剣を2本両手に持ったティフォが物凄いスピード-物理限界を無視した速さでレグジェの方へ向かう。
それをレグジェはテレポートで躱しながらカウンターのタイミングを見計らう。
押し寄せる薔薇の斬撃とティフォに向かって、レグジェは光弾と小さな鎖のような魔弾を放った。
-勝負あり。
ティフォはその場で倒れると小さく「また黒星…」と悔しそうに呟いた。
機械であり死魔という生命でもある-そんなティフォは何故曖昧なただの魔法生命体1体に負けてしまうのかわからなかった。
そう言うとレグジェは空間を元に戻した。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。