第18話

【最果ての世界】とは
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2018/02/17 06:29
レグジェ
レグジェ
……シュヴェ-【最果ての世界】(リル・フェアリエル)の意思であるあなたは何故自分の名前を持っているの?
シュヴェ
シュヴェ
……レグジェ・A・フォスフォリア-魔神位階序列七位【聖魔神】…ティフォの親友、か。
答えよう、と言いたいところだが-先にこの世界について話すべきだな
【最果ての世界】-最後の世界であるここは。
すべての生命、生物が朽ちていく【故郷】から逃げ、生き延びるために創った最も若き最後の希望。
人間、水妖、天使、悪魔、妖精、龍、地精、機械、神-あらゆる生命が、生物が集い手を差し伸べ合った。
【最果ての世界】-当機はそれを創世された日から今日に至るまで、ずっと見ている。
シュヴェ
シュヴェ
だが-【世界の破滅者】(ティフォ)が2480回当機を殺したことにより当機の本体-【界髄】は傷付けられた
ティフォ
ティフォ
………っ
シュヴェ-【最果ての世界】そのものの言葉にティフォは思わず目線を下げる。
【界髄】-細胞ひとつひとつにも核があるように、人間ひとりひとりにも心臓があるように。世界ひとつひとつにも世界が成り立つための必要なものはひとつある。
しかしそれが傷付けられると-
シュヴェ
シュヴェ
当機-いや、もうこの虚像らしい口調はやめよう。
我の仮不活化への道は進まされる
世界の仮不活化。
それは地上の水を枯らし。
自然の恵みを消し去り。
陽光さえも遮る生物滅亡の危機にさらされること。
シュヴェ
シュヴェ
我がもし仮不活化では済まず完全不活化したらもう世界はない。
-何兆光年も前に生まれたはじまりの世界が完全不活化して早約349億光年。
この虚像-シュヴェか。
シュヴェが我ら世界と同化したのは38140年程前。…ティフォとちょうど別れた後だったな
ティフォ
ティフォ
シュヴェの記憶あるの………?
シュヴェ
シュヴェ
一応な、虚像といえど元々は実在していたからな。
…まぁシュヴェもティフォもレグジェも………生物からしたら長命不死の魔神達も我からしたらまだまだ幼子も同然よ
【最果ての世界】-シュヴェは意外と面白い。
機械らしい口調が消えた途端【最果ての世界】の思うように話し出すその姿は中々興味深い。
レグジェ
レグジェ
どうやって虚像を実態化させて言語を話させてるのよ…
シュヴェ
シュヴェ
実態化させてるのは貴殿ら魔法を操る者が使っている実体化魔法とほぼ変わりない魔法で、言語を話せているのは意思を込めた魔力をそのまま虚像に送っているに過ぎない
魔力まで送っているのか、とレグジェは感心した。
世界一の魔術師-【魔導姫】と呼ばれたレグジェが感心するのだ。【最果ての世界】-いや、世界そのものがどれだけ凄いのかがよくわかる。
レグジェ
レグジェ
あたしの無尽蔵の魔力も…元々はこの世界のすべてのマナ、つまり-
【レグジェの魔力】ではなく【世界の魔力】が底なしだったということだ。
ティフォ
ティフォ
【世界】-強い、というか……理そのもの
レグジェ
レグジェ
覆すことの出来ない絶対的な聖力、か…。
…生命体、生物-その全て、【二十二種族】(ペレキュール)その頂点…あなたは-
レグジェはボロボロの本を軽く開きながらその頂点の種族の名を口にする。
レグジェ
レグジェ
【二十二種族】(ペレキュール)位階序列1位-絶対的な聖力を持ち、存在自体が理になれる…【世聖霊】(ワールドクラウス)、なのね
シュヴェ
シュヴェ
如何にも。だが-それももう我が最後。
我が生命にて【世聖霊】は絶滅を免れている
ティフォ
ティフォ
……種族の絶滅、聞いたことない
レグジェ
レグジェ
簡単よ、その種族が世界から消えたらそれで絶滅。
だけどあたし達生命には魂とそれの器の境界が無い。
だから実質あたし達生命は不死の存在-だけど、それはただ単に『死なないだけ』。…そうだよね、シュヴェ
シュヴェ
シュヴェ
如何にも。
我ら生命体は死ぬという概念がない代わりに【消滅】はする。
その証拠に-もう世界は我しか残っていない。
我【世聖霊】も列記としたひとつの生命であることを知らぬ愚者共の泥仕合が我の仲間を消した。
……我は【二十二種族】の大半の種族を嫌っている
【世聖霊】(ワールドクラウス)、【悪魔】(デビル)、【天使】(エンジェル)、【妖精】(フェアリー)、【龍精】(ドラゴン)、【妖魔】(デモンイデルス)、【地精】(ステラドワーフ)、【幽霊】(ゴースト)、【幻想】(ファンタジア)、【星魔】(スパークルデーモン)、【聖霊】(ホーリーエレイス)、【地下地精】(ノワルドワーフ)、【水妖】(セイレーン)、【天妖】(ルフィルイーデア)、【宙棲】(テトラニクシェ)、【森精】(エルフ)-そして最弱の種族と言われる【人間】(ポリフェンス)とその他5種族。
【悪魔】と【星魔】は性質が全く異なり、【幽霊】と【聖霊】も性質が異なり-【水妖】、【天妖】、【妖魔】は完全に違うもの。
【地精】と【地下地精】は地上に住むかどうか。
【宙棲】はそもそも地上を見下ろす存在。
住む場所が違い-最も性質を知られていない種族のひとつ。
シュヴェ
シュヴェ
-我は特に【人間】と【悪魔】、【天使】は…いけ好かん、我ら【世聖霊】を除けば最強の2種族とどの種族よりも脆く魔法適性の低い【人間】が張り合ったあの大戦で我の同胞は軽く5体程消滅した…
俯くシュヴェ-の虚像を通して【最果ての世界】は言った。
シュヴェ
シュヴェ
我は我が理想とする世界を創りたいと思った。
だから我は【世聖霊】の特性を活かし戦争の起きない世界を造り上げた。それがこの【最果ての世界】であり-平和で、永久に続く世界。
魔法大会などの催しは時々この虚像を通して見ている。
…皆、とてもいい魔法の使い方をしていて我は嬉しく思う
レグジェ
レグジェ
…ねぇ、シュヴェは世界と同化したって言ってたよね…じゃあ、シュヴェの種族は…何だったの?
シュヴェ
シュヴェ
シュヴェ-我らと同化したこの虚像は【ペルシュレーゼ】の『ケンプファルジェン』型と【死魔】の混血個体だ。だがティフォとは種族が違う。
……彼女は本来地上では生きられないはずの【宙棲】…………の『亜種』だった
ティフォ
ティフォ
亜種………?

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