と、男の子が耳元で囁いた。
「……力抜いて。このままじゃ締まりすぎてて、動けない」
「でも、……ッいた」
「大丈夫だから。ゆっくり呼吸して。動かないから」
「っ……う、うん」
わたしは、男の子の言う通りにした。はじめは浅い呼吸から、徐々に長く深い呼吸に移行していく。
ゆっくり、ゆっくり呼吸を繰り返すわたしを、男の子はじっと見守っていた。
次第に、身体の緊張が解けていく。
それにより、痛みの感覚が、薄れていった。
「はぁ、は、ぁ……」
「大丈夫?」
男の子が覗き込むようにして、わたしを見た。その優しげな顔に胸が鳴る。
わたしは慌てて視線をそらした。
「……ッ、だ、だい、じょうぶ」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。