相手は、一方に動かない。
しかも、相手は小さい少女なのだ。
可愛そうだ。
私は、そう思った。
でも、敵なんだ。
油断は出来ない。
油断すると、負けてしまう。
負けるとは、死ぬって事だ。
それに、相手は、相当強い。
簡単には、勝てない。
強いかどうかは、足音の速さでわかる。
結愛から前に聞いた事だ。
私は、一度教えて貰ったことは、忘れないと決めている。
忘れないようにメモをとっている。
自分の血で。
ペンは無かった。
ノートだけ落ちていたのだ。
その時、私は、自分の血が目に見えた。
だから、血で書いてみた。
すると、意外と書けた。
だから、書く物が見つかるまでは、血で書く事にした。
でも、そんなに長文は書けない。
だから、分かりやすく短く書いている。
そして、私は、忘れないようにしている。
その時、小さい少女が倒れた。
そして、苦しそうに、狂ってる声で言った。
『やだ!殺し、たく、ない!逃げ、て・・・は、や、く。』
途切れ、途切れだった。
私は、危険だと分かってるけど、助けたい、そう思った。
でも、その時、琉が言った。
『逃げよう!』
『でも、苦しそう。助けたい。』
私は無意識に、苦しむ小さい少女を見て、言っていた。
『危険だと分かっても?』
琉が言った。
『えっ?声に出てた?』
私が驚いてそう聞くと、琉は、言った。
『うん。で?』
私は、迷った。
このまま、琉に合わせるべきか。
だって、合わせなくて、一回後悔しているんだから。
それに、戦ったら、負ける可能性の方が高い。
でも、助けてあげたい。
どうしよう。
琉と結愛が死ぬのもやだ。
小さい少女も見捨てたくない。
その時、結愛が言った。
『もう行きましょう!あの子は、助からないと思います。そんな予感がします。あっ!危ない!』
私に小さい少女が飛びかかってきていた。
それを結愛が守ってくれた。
その瞬間、絶望的になった。
目の前に、赤い血が流れている。
それは、結愛から出てきているものだった。
『よかった・・・』
結愛は、そう言うと、喋らなくなってしまった。
私は、言葉が出なかった。
そして、少女の口からは、『お前ら、殺す!』と出てきた。
私は、何もかも突然過ぎて追いついていけない。
でも、一つだけわかる。
結愛は、死んだんだ。
そして、それは、小さい少女に殺されたんだ。
許せない。
いや、でも、私が油断したから結愛は・・・。
私がいけないんだ。
私が早く決断してれば・・・。
私のせいだ!
その時、琉が言った。
『ちゃんとしろ!死にたいのか!自分を責めるな!結愛の分まで戦えよ!あいつは、お前に死んで欲しくないから、守ってくれたんだろ?』
琉が一人で戦っていた。
でも、攻められる一方で、攻撃が出来てない。
きっと、自分を守るので精一杯なんだ。
だから、このままだと、琉まで・・・。
でも、身体が動かない。
逃げればよかった。
琉の言う通りに。
これから、どうすればいいんだ。
誰か助けて!
お願い!
もう私は、そう願うことしか出来なかった。
今の私じゃ勝てないと分かってるから。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!