その放課後。
私は霜野君と肩を並べて歩いていた。
すっかり夏が迫って来始めた。
夏の到来を待ち望んでいるかのように
自然は心を踊らせている。
気づいたら、霜野君と付き合い始めて早2ヶ月が経とうとしていた。
すっかり霜野君と行動を共にするのにも慣れ、
霜野君のこともかなり分かってきた。
例えば今。
さりげなく車道側だった私と場所をチェンジしてくれる優しさ。
大荷物で困っているおばさんを手伝ってあげる
優しさ。
道端で震えてる子猫の頭を撫でる霜野君。
その姿全てが冬人先輩と被る。
その度、心が跳ねる。
どこか冬人先輩とも顔立ちが似ているせいか
私は霜野君を冬人先輩と重ねているかもしれない。
私はまだ、冬人先輩のことを心のどこかで想っている。
でも冬人先輩に似ているからって、そういう風に見るのはダメだよね…
気づいたらそう口にしていたらしく
霜野君が聞いてくる。
そう言うと霜野君は顔を少し曇らせた?
あれ…そう言えば冬人先輩も霜野って苗字だ。
こんな偶然あるのかな?
まさか兄弟なんて…ね。
一応聞いてみる。
相変わらずぶっきらぼうに答える霜野君は
私から子猫へと目線を移す。
んー。霜野君。まだ掴めないところがある気がする。
なんだか寂しい。
そうしているうちに、立ち上がる霜野君。
私は慌ててその後を追いかける。
すると急に立ち止まった。
ぶつかりそうになって止まる。
え。
いきなりどうしたんだろう。
だけどそれ以上何も言わない。
あれ?
さっきの褒めてるのかな?
何だかそう考えると微笑ましくなって
そう言った。
何だか霜野君と一緒に居るようになって笑顔増えたかも。
それに、何だか落ち着く。
何故か霜野君の前では完璧では居なくてもいい気がしたから。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!