第5話

*もしも世界に言葉が存在しなかったら
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2018/01/04 13:40
もしも世界に言葉が存在しなかったら…

さあ  どうしよう?



お母さん  喉かわいた

お父さん  なんだか背中が痛いんだ

ジェスチャーしてみるけど

言葉が  ないんだもの

背中って  伝わってもそれは体のどこの名前なの?

痛いって  どれくらい? っていうかどんな感じ?

なんて声出したって

お互い  意味がよみとれなくて

もうお話しするのが  嫌んなって…

とりあえず  おなかがすいたから

卵をわって  フライパンに火をかけて卵焼きでも作ろうとする。

すると  わけもわからないまま

お母さんが火を止めて  なにやら怒りだした

怒ってる というのがなにで どういうものかもわからないけど

お母さんとの間に  流れるピリピリとした空気が

肌で  よくない状況だと 伝えてくる

わけもわからないまま  ごはんを食べ損ねた僕は怒った

おたがい言い合っている声の 意味はしらないけど

とりあえず よくないことだけは知って 僕は家をでた。

お母さんは  

『火は危ないんだから 気を付けて使いなさい。』

そういいたかっただけなのにね。  





これだけじゃない。

ジェスチャーだけで  伝えられるのも限りがあるはずだよ

僕ら過ごしていく日々の中

いっぱい  いっぱい  伝えたいことは増えていく。

それも  似たようなこと何度伝えてみたって

まったく同じものは  ひとつとしてないんだから。

今なら

『言葉がある世界』がもしもじゃない  世界だけど

言葉があるこの世界ですら  

伝えきれない想いも  すれ違う想いも

まだまだ  溢れてる。

ジェスチャーも  言葉も  

全てを  使ったらようやく  

僕の胸の内   すみっこからすみっこまで 伝えられるのかな?


ーー…ううん。

たぶん、

それでも  伝わらないことって   多いと思う。

だから

今言葉ってものがあるうちに  少しずつでも…

全てが無理でも せめて 少しくらい僕の気持ち

誰かに 覚えててもらえるような 


 

そんな   今の世界に僕は

”ダイスキ”だという 言葉をプレゼントしよう。 

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