試合を見ながら部活をする……というのは、私にとっては難しかったらしく、なかなか部活の方が進まない。
サッカー部の試合に、目が釘付けになってしまう。
……まあ、サッカー部というか、さっきから私は高良君から目が離せなかった。
高良君は2年生にしてレギュラーの座を勝ち取っただけあって、やはりチームの中でいい動きをしているように思う。(私はサッカーのことは全くわからないけれど。)
エースとか、そういう華やかなものではないけれど、ボールを上手く相手チームの間を抜けるようにまわしている気がする。
……すごいなあ。
素直にそう思った。
ずっとずっと、見ていたいと思った。
高良君が頑張って、努力の成果を発揮している姿を見ていると、こっちまで元気が湧いてくる。
高良君には、すごい力がある。
私はそれを、スケッチブックの最後のページで表現したかった。
そしてサッカー部員全員が全力で戦い続けた結果、うちの高校が勝利した。
汗を拭きながら1人でドリンクを飲んでいる高良君を見ながら、口パクで『お疲れ様』と言うと、高良君は『ありがとう』といつもみたいな笑顔に戻り、大きく手を振った。
なんとも言えないくすぐったい気持ちが、心地よくて、心のコップに大好きなジュースがとくとくと注がれ、やがて満たされるような満足感を得た。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!