最近、俺は困っている。
何に困っているか、それは、先輩が俺の告白を聞いても動揺しなくなったことにだ。
前までなら顔を赤くして困っていたのに、最近では「はいはい」って感じで、笑顔でスルーをする技を身につけている。
元々、毎日のように告白……というか、好きっていう言葉を伝えていたのは、もっと俺のことを意識すればいい、もっと俺のことで頭がいっぱいになればいいっていう思いからだった。
先輩に、普通の告白に対する免疫ができてしまった……?
だとしたら困る、すごく。
ただでさえ恋愛面では相手にされてないっていうか、普通の先輩と後輩って感じで、圧倒的俺の片思いだし、この間なんて最初はかっこいいって言ってくれたのに、俺が照れまくったせいでかわいいとか言われるし……
俺は、かわいいよりかっこいいって言われたいんですけど、先輩。
そして、ある日の部活終わりの部室にて、俺の悩み事はさらに増えた。
俺が着替えていると、正人が小声でそう言いながらこちらへ向かってきた。
俺がそう聞くと、正人は部活でかいた汗を拭きながら話し始めた。
前田先輩_______
①サッカー部三大イケメンに選ばれるだけあって、めちゃくちゃモテる。
②なんかわかんねーけど大人な感じ。
③かわいいっていうより、断然かっこいい!
俺は心の中で前田先輩について簡潔に三つ特徴を出し、それから焦った。
俺普通に負けてる。
前田先輩は3年だから和泉先輩と接点も多いだろうし、イケメンだし、大人っぽいし。
対して俺は、ガキだし、2年だし、別にモテねーし……
俺がガチめに落ち込んでいるのを見て、正人が下手なフォローを入れ出す。
前田先輩が和泉先輩に告白する……
和泉先輩は、とりあえず付き合うっていう考えがまずないと思われるから、きっと好きじゃなかったら断るんだと思う。
でも、それをきっかけに前田先輩のことを意識し始めるのでは?
俺は、それが1番怖い。
年下で、全く相手にされていない自分が、かっこ悪くて、ダサくて、嫌いだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。