それから、休み時間になる度に
玲と話をしようと試みるが
挨拶が終わるとすぐに席を離れてしまい
結局何も話さないまま昼休みになった
……どうしようかな
このまま気まずいままなのは辛い
とりあえず、弁当を食べながら考えよう
と、日向を誘いに行くが
日向はまだ様子がおかしい
今だって、前の授業の教科書やらを出したまま
私が声をかけるまで、ぼーっとどこかを見つめていた
……やっぱり、颯海先生絡みだよね……
日向の席の横の椅子を引っ張って
日向の机の横に座る
聞かない方がいいのかな?
……でも……
ないって……
そんな
そう言って
日向はまた、作り笑いをした
……なんで
自分でもびっくりするくらい
大きな声が出た
……なんで
私が苦しい時
助けてくれるのは日向なのに
どうして
日向は自分が苦しい時
全部一人で抱え込んじゃうの
そんなに、私は
頼りないかな
整理がつかない感情が
ぐるぐる回って
目から溢れ出しそうなのを何とかこらえる
「なに、どうしたの?」
「ケンカ?」
周りのクラスメイトの声が
やけに響いて聞こえる
そう言って私は
走って教室を飛び出した
後ろから
日向が私を呼ぶ声が聞こえてきたけれど
戻ることなんて出来ず
ただ、誰もいないところに行きたくて
目から流れ落ちる涙を拭いながら
私はただただ走っていた
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。