日向side
なんでこんなことになったんだか
今私は夢の国こと
ディドリーランドに来ている
──わけなんだけど
千草に盛大に笑われている
なぜかと言うと
リッキーの被り物をした私が大変ウケるらしい
……しらねーよ!
元はといえばあんたが勝手に被せてきたんだろが
え? っと?
待って待って
何だって?
予想と180度ちがう答えに
一瞬思考がスリープする
そうだよね
冗談、だよね?
いつもと同じようなノリで言われたから
なんかびっくりした
いつも女子扱いなんてしないくせに
ビビるってば
魔法の国だから
いつもよりテンションが高いのね
──うん
そういうことにしておこう
案内図を見ながら
周りをキョロキョロしていると
人混みの向こうに
見慣れた人影を見つける
そこには 楽しそうに笑う
秋の姿があった
誰かとはなしているみたいだが、
その相手は周りの人にかくれて
確認出来ない
誰が友達といるのかな?
千草の忠告を無視し
人混みをかき分けて秋のそばに行く
と、その時
目の前の人が横に退き、
一気に視界が開けた
目の前には
楽しそうに笑う秋
その隣には
綺麗な女の人が立っていた
その姿が あまりにもお似合いで──
千草の声で 現実に引き戻される
え?
どうしたって
何が?
────嘘だ
わかってる、ちゃんと
ずっと前から
知ってる
秋を見るたび
どうしようもない気持ちが湧き上がった
女の人と一緒にいるのを見た時
お似合いだと、思ってしまった時──
心臓のあたりが
病気なんじゃないかと思うくらい
痛くなった
苦しくなった
わかってる
わかってる
私は
秋のことが
──好きだ
その時私は
自分のことでいっぱいいっぱいで
気づけてなかった
千草も同じように
悲しそうな表情をしていたこと
──日向side end──
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。