千草side
やばい
可愛すぎる
やり過ぎかなと思ったけど
やっぱりこれ選んで正解だった
そう思いながら
リッキーの被り物をした日向を見る
思わず笑いがこぼれた
あ、今 日向 イラついたな
やばいやばい
本当に何でこんなに好きなんだろ?
そう思うくらい日向に依存しているのが
自分でも分かる
重症だな、これは
あ、これは ちょっといじりすぎた?
──返事はやすぎるだろ
どんな反射神経してんだよ!
もう少し考えてくれてもいいじゃん!
悩む素振り見せてくれてもいいじゃん!
千草くん寂しい……
……いつものノリで
そう答えてしまう自分が憎たらしい
まあ、こんなもんじゃ伝わんないか
そう思いながら日向と
最初にどこに行くか決める
だって、日向には──
っ……
噂をすれば
そう言って日向は
随分遠くのお店を指さした
──かろうじて
表情が読み取れるかくらいの距離なんだけど……
よく見つけたな
あれ? でも 颯海先生の隣にいる人
女の人? みたいな──
日向のところからは
その人が見えていないのか
いきなり日向が走り出した
っ……お前は小学生かっ……!!
自分が傷つくなんて思いもせずに
一目散に走っていく
っ……ほんっとに あいつはっ……!
追いついた時
日向の目は
何も映していなくて
日向はただただその場に立ちすくんでいた
俺が名前呼んだのに
なんにも反応しない
いつもだったら
名前呼ぶな!って
怒るくせに
我ながら愚問だったな、と思う
どうした なんて
分かってるわけで
今のはただ
日向に自覚させるため
ひどい奴だな 俺も
さらに追い打ちをかける
ほら
認めろよ
このまま
ずっと このまま
止まったままなんて
前に進めないだろ
お前も
俺も──
認めろ
認めろよ
日向は
それだけ呟いた
こいつは脆くて
壊れやすいから
誰が、そばにいないと
ダメなんだよ
──けど
日向の必要としている人は
俺じゃない
馬鹿だな 俺も
──千草side end──
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。