背中に暖かい体温
私は今、どういう訳か誠先輩の腕の中に収まっている
……というか、なんで誠先輩が学校にいるんだ?
どうやら先生も同じ疑問を持っていたらしい
……びっくりするくらい冷静
というか、誠先輩って、こんなに大人っぽかったっけ?
臼井先生より断然大人っぽく見えるんですけど……
それに比べて、まだ現状把握ができていない臼井先生
テンパりすぎて刑事ドラマの容疑者みたいなセリフになっちゃってるよ
…………かっこ悪い
──え? どういう事だ?
私、誠先輩に誘われた記憶はひとつも──
そう思って、誠先輩にチラッと視線を送ると
先輩は、私の視線に気がついたのか、
ニコッと微笑んだ
────あ、そうか
先輩、私の事、庇ってくれてるんだ
許可とった先輩と一緒に来たんだったら
不法侵入にはならないもんな
やっぱり頭が回らない臼井先生
そう言い残して、臼井先生はまた見回りに戻って行った
そう言って頭を下げる
すると、誠先輩が、慌てたように
パタパタと手を振った
そう言って、これまでの経緯をざっくりと説明する
見た目に反してまさかの毒舌っぷりを発揮する誠先輩
まあ、要するにそうなんだけど
言い方……
まじか、誠先輩
そうだった!!
あいつも見つかったらやばいんじゃん!!
そう思い、歩きだそうとした瞬間
気持ちだけが焦って前に行きすぎたせいか、
身体がついていかず、自分の足に自分の足を引っ掛けて、
前につんのめってしまう
っ…………!! 私、今日どれだけ転べば気が済むんだ!!!
そう誠先輩が言って手を伸ばし、腕を掴んでくれたけど
もう身体が完全に倒れていってしまっている私を引き戻すことは出来ず、
一緒になって倒れていってしまう
床に激突する直前、強い力で肩を引き寄せられ
そのまま身体が半回転し、
強制的に誠先輩と位置を逆にされた
────ドンッ────
鈍い音がして、体に少しの衝撃
痛くはなかった
床に激突する直前、誠先輩が私のしたになって、
激突した時の衝撃を、全部受けてくれたのだ
そう言って誠先輩は笑っているけど
結構すごい音したし……
すごい、痛いんじゃないだろうか
床に仰向けに寝転ぶ誠先輩
その上に私が馬乗りみたいな……
……馬乗り!?!?
声がした方を振り返ると
すぐ横の階段の影に寄りかかっている人
いつの間にかそこには、
怒ったような表情の玲がいた
やばい、どうしよう
玲に、見られた──────
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。