そのカエルは頭に花がある
小さな小さな花だ
ともだちがいない理由は そう
花が咲いたカエルなんて変だから
寂しいけど 寂しいけど
当たり前のことかもしれないね
そんな日々にいい気もしないし
旅にでも出ようと思ったんだ
歩く 歩く カエルは歩く
どこまでも遠くいこう
歩く 歩く 小さな花が
風に靡くのです
そのカエルは頭に花がある
小さな小さな花だ
カエルはあまりそれが好きじゃない
だって普通じゃないから
冷たいけど 冷たいけど
雨ってすごく不思議な味がする
優しいくらい カエルを濡らした
雨がとんと降っている
歩く 歩く カエルは歩く
どこまでも遠くいこう
歩く 歩く カエルは歩く
雨上がりの空が綺麗です
ウサギに会った カラスに会った
カマキリに会った アリに会った
ところがみんな頭の花を見て
なぜか褒めてくれるんだ
森を歩いた 沼を歩いた
山を歩いた 川を渡った
いつの間にかこの花が
ちょっと ちょっと 好きになっていた
ある日 ある日 カエルは気付く
花が少しずつ枯れてること
それはやがて一粒の種になった
そして そして カエルは決めた
その小さな種を頭に植え
歩く 歩く カエルは歩く
見上げた空が綺麗だ
ある日 ある日 カエルは着く
目の前にはただ広い海だ
そのカエルは頭に花がある
小さな白い花さ
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!