戦いは簡単に思えた。
声を張り上げて、ユナが高らかに歌う。
音を紡ぐ銀鈴の声は、一声聞いただけで虜になってしまいそうな程、美しい。
まさに歌姫といえるその声は、まわりの音を掻き消して、それでも耳に残った。
歌姫を守りしは、騎士。
一太刀、二太刀と、冷ややかに剣が振るわれる。
氷刃を思わせる蒼いそれが、クリムゾンレッドのライトエフェクトを帯びた。
ソードスキル・「バーチカル・アーク」。
隙の無い二連撃に、不用意に近づいたモンスターがなすすべなく切り刻まれた。
紫黒の花が、宙を舞う。
ミドルレンジから突進系ソードスキルで一気に距離を詰めた少女が、走った。
硬直時間などものともせず、軽やかに舞い、剣を振る。
取り巻きを一瞬で倒してから、にまっと笑った。
ユウキが開いたウィークポイントを正確に射抜くのは、冥界の女神か。
ユナの近くにすっくと立ち、長弓を構えるしぐさ。
獰猛なヤマネコを思い浮かばせる蒼い瞳が、
ゆっくりと、しかし確かに細められた。
抑えられた気合いと共に、最前線で独り剣を振るう漆黒の剣士。
その姿はどこか寂しげで、けれど強かった。
ただ無心に、「眩しい」勝利を求める黒い「影」。
―――――――――矛盾していた。
死は突然にやってくる。
誰かが、そう言っていた気がした。
身体が、動いた。
ソードスキルの硬直時間を狙った攻撃。
動けないキリト。
もう、なにがなんだか解らなくなって、全速力で彼のもとへ走った。
懸命に引き絞った細剣で、振りおろされる凶刃をパリィする。
細剣が、悲鳴を上げた。
折れるな、と強く祈りながら、刃下のキリトへ飛び付いた。
――――――助けたい!
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。