そんなわけで、いつものように借りていた本を返却し、次に借りる本を探すため本棚へ行く。
私は、恋愛小説コーナーのほうへ向かった。
たくさんの本棚が整然と並んでいる。
静かな館内ーー
と、5メールほど先に、見慣れた姿を見つけた。
私は思わず立ち止まる。
シックな白いカッターシャツと紺のズボン。
自然な茶色がかった髪に黒ぶちの眼鏡。
艶のある髪を揺らしながら、本を手に取る男の子。
前髪がいつも眼鏡にかかっているので、どんな顔なのかはっきりとは見えない。
本棚の方を眺めているそんな彼を、私は図書館で頻繁に見かけていた。
図書館で合う男の子。
私は、その子に恋している。
なんていうか一目惚れ。
半年前、初めて図書館で見かけた日からずっと好きだ。
けれど、話しかけられないでいる。
彼はそんな雰囲気を醸し出している。
とても綺麗な人だ。
それでも、名前だけは知っている。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!