第8話

♡8♡
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2017/11/16 12:25
鈴谷小太郎。



彼が受付で本を借りる手続きをしている時、こっそりと会員カードを見た。
あなた

(何……読んでるんだろうな)

と、向こうが私の視線に気づいたようでこっちを見た。

髪と同じくその瞳も茶色だった。
あなた

(あ……どうしよ。目が合っちゃった。と、とりあえず頭下げなきゃ)

軽く会釈すると、相手も同じようにそうした。


トクントクン。


高鳴る鼓動。
小太郎
…………
あなた

…………




重なる視線。



けれど、気まずくなってつい目をそらした。

そして、背を向けると逃げるように恋愛小説コーナーへ。
あなた

(あぁ、私のバカ)

いつもそうだ。

せっかく話しかけるタイミングだったのに、無駄にしてしまった。
あなた

(……またやっちゃった。恥ずかしくて目をそらしちゃう)

肩を落とした。




話したことは一度もない。

本当は話しかけたいけど、何を話せばいいのかわからない。

ずっとそんな状態がつづいている。

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