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第1話

季節は____
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2017/11/07 08:39




季節は嫌い。



人の名前じゃないよ、春夏秋冬の季節。




だって、皆おいてけぼりにしていくんだもの。



どれ程、季節を愛しても季節は行ってしまう。


変わりに、また別の季節が来る。



____そんなものだよね、季節って。



もうすっかり高くなった空を見上げる。



季節と一緒で、“あの人”も戻って来ない。



「会いたいよ」



なんて呟いてみても、貴方は来ない。



当たり前だよね、だって今は岡山に居るはず。



それに比べて此処は東京。




地図上じゃ、近いのに実際はとっても遠い。




いくらなんでも、少しくらい寂しさってものは感じるんだよ。




暦の上ではもう冬。そのせいか寒い。



涙が出そうになるのは、きっと寒さのせい。




____家に帰ろう。



座っていたベンチから立ち上がる。


風が吹く事に寒くなる。



その度に涙が出そうになる。



____やっぱり、季節は嫌いだなあ。












寒さに耐えながら、歩く。 ただひたすら歩く。



それはまるで歩くことで寂しさを消し去ろうとするように。



そんなことをしても無駄な事は解っているけれども。



何かをしないといけない様な気がして、胸の辺りがざわめく様な気がして。



後何回、季節が巡り巡ったら私は君に辿り着けるのだろう。



そっとコートのポケットからスマホを出す。




電源ボタンを押して、ロック画面には着信履歴。



誰だろう、なんて思いながらロックを開く。




瞬間、私のスマホから鳴り出す着信音。



驚いて、スマホを落としそうになってしまいもう少しで電話が切れるところだった



ギリギリの所で緑のボタンを押して、電話に出る。













『もしもし___』



電話越しの声だけれども。



「あ!やっと繋がった!」



直ぐにわかる君の声。



少し、嬉しくて声のトーンが上がる。



『どうしたの?』


なるべく、声が裏返らないように願いながら話す。



____その願いは叶う事もなく声は裏返ったのだけれども。



君はクスクスと笑いながら言った。


「今、何処に居ると思う?」



何処って、岡山じゃ____。



疑問に思いながらも、質問に答える。



『岡山じゃなかった?』



そう言うと、君はまたくすりと笑って




「家に帰ってみたらわかるよ」



と言った。




それって____。


生憎、私は勘のいい女で。


意味がわかってしまった。


自然と家へ向かう足取りが早くなる。


最終的には走って辿り着いたマンション。


マンションのエレベーターのボタンを連打する。



どれ程急いでもエレベーターは来ないから、階段で一気に駆け上がる。




途中で転けそうになっても、走る。走る。1分でも1秒でも速く。



風がヒューヒューと耳元でなっているのが聴こえる。



305号室と書かれた扉を、大きな音を立て開ける。



呼吸が乱れて、息がしにくい。ドアノブに体を預けながら深呼吸を繰り返す。



すると、突然目の前に現れた見慣れたペットボトル。私の好きな飲み物のパッケージが印字されている。




弾かれたようにパッと顔を上げると、そこには大好きな笑顔が。

























そこにいたのは、案の君で。



私の大好きな笑顔で迎えてくれていた。



唖然と、立っていることしか出来ない私の目を見て君はまた笑ったよね。




「季節は過ぎても戻って来るよ。」




____だから、大丈夫。



それに、僕とあなたは同じ空の下。きっと何処かで繋がっているから____。



君はそう言って、「ね?」と再び笑った。



そんな笑顔を見たら何故だか、涙が出てきた。



____これも、きっと季節のせい。




否、君のせいなのかも知れないね。
なんて____。







ちゅん、ちゅん、と鳥のさえずりが聞こえる。



カーテンから光が差し込む。



____気付いたら寝ていたみたい。



部屋を見渡す限り君は居ない。




でも、これでいいの。


服を着替えて、外に出る。



今日は少しお洒落にきめて。



外は少し曇っているせいか、やっぱり寒い。



すっかり高くなった空を見上げて、空に向かって私の精一杯の笑顔を向ける。



貴方にありがとう、って言いたいの。



空が、まるで私の思いが伝わったかのように



青い空が顔を出していた。









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