エプロン姿のお姉ちゃんは、部屋に入ってきてベッドから少し離れた場所で聞いてきた。
静かなお姉ちゃんの声。いつもは調子乗りでわたし達がするような子供の話にも乗ってくるお姉ちゃんでも、家族の誰かが倒れた時には真剣そのものになる。
お姉ちゃんにはわるいけど、なんかへんな感じ…
あれからわたしは、三日間、ずっと学校を休んでいる。
千江…ましてや大河くんと合わせる顔なんてない。
あんなこと言ったあとでどう謝って償えばいいんだよ…
そう考えると、またわたしの目の前が滲む。
ギュッと目を瞑ってかろうじて涙が溢れ落ちるのを防いだ。
…あーダメだダメだ!
そんなしょげてちゃ、お笑い要素がなくなっちゃう!と、その時だった…
グーッ……ギュルル…
…う。
その音を聞いた瞬間、わたしは一人で真っ赤になった。
は、恥ずかしい…
コラッ!わたしのお腹!読者の皆さんにわたしの女の子キャラを崩壊させてどうすんのよ!
…でも、よく考えたら、ここ三日間、十分な食事を取ってないなぁ…
よし!なんか食ーべよと決めたわたしは、部屋を出て下に行き、冷蔵庫から適当なものを…
え、誰?だれ?
あたりを咄嗟に見回してみると…壁にもたれかかって腕組みをしているお姉ちゃんがいた。
ギクッ!
少し声を病人っぽくする。
演劇部所属のわたしとしては、これぐらい簡単簡単!
ギクッ!
こ、声を病人っぽくし過ぎた?
え?そう意味でのうそ?
さすがお姉ちゃん。子供を見る観察眼はすごいね。
それは…
と、わたしが口にしようとしたその時わたしは一つ気づいた。
今度はお姉ちゃんがギクリとする番。
目をそらすお姉ちゃんだけど、わたしは視線を逸らさない。
教えてくれるらしい。
でも…なんだろう?教えどきって?
とりあえず立ち話もなんだし、座れって感じでお姉ちゃんが促して、わたしとお姉ちゃんは向かい合わせに座った。
人間じゃない。
という言葉以上に、お姉ちゃんの言葉が理解できなかった。
嘘…?って、じゃあ、どういうことなの?お姉ちゃんとお母さんは血の繋がりがないの?
ち、ちょっと待って!
頭の回転が早いわたしでも理解が追いつかない。
え、えっと、整理すると、お姉ちゃんがいとこってのがうそで、本当は実の姉妹だってことでしょ?
あ…、ちょっとわかってきたかも。
混乱していたわたしの脳が、静まって行く。
お姉ちゃんの言葉も、自然と頭に入って行く。
わたしは人間じゃない、ということでさえ、受け止めきれていた。
そうだ。まずは冷静になれ。そしたら、何か見えてくるはず…
それからのお姉ちゃんは、たくさん話してくれた。わたしの秘密と、わたしの過去、あの二人組の秘密、妖怪の秘密、それから…
わたしの母であり、妖魔界の女王であった、相川玲衣(あいかわ れい)の話も…
ここでは書ききれないから、全ては次の話で記すね。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。