第15話

最悪な1日になっちゃった
95
2018/02/27 11:42
………………………………………え???
はい?????????
一瞬よくわからなくて、頭にクエスチョンマークが数千個並んだ。
恋
え、えっと…それって?
大河
大河
…まあ、そういうことです
そ、そういうことですじゃないよ!!
わけわかんないから!
つーかそもそも、わたし人間なんで!
草菜
草菜
まあでも…この教室に入れるの、妖怪だけですからね
へ?それって…
千江
千江
じゃ、じゃあ、私も妖怪だってこと?
千江の声は裏返っている。
草菜
草菜
はい、詳しいことを言うと…
恋
…ちょっとまってよ!!!!!
ビクッ
わたしの大声に、全員が肩を震わせた。
千江
千江
恋ちゃん…?
立ち上がったわたしの顔を見た瞬間、千江は驚愕の表情を浮かべた。
それもそのはず。
自分で自分を見ることはできないけど、おそらくわたしの顔は怒りに満ちていたから。

だって…
恋
なんでなの?
いきなりこんなわけわからない教室に連れ込まれて、
訳も説明せず自分達の話ばかりして、
あげくの果てにわたし達が妖怪だとか言い出して、
混乱しているわたし達に慰めの言葉の一つもかけないで。
わけわかんないよ!!
人の気持ちも少し考えてよ!!!
はあ、はあ……
一気にまくしたてて、わたしの息は上がっていた。
だって、だって、しょうがないじゃん!
もう怒り限界だったもん!
いきなり訳わかんない話し始めたり、わたし達が妖怪だとか…
恋
…第一、わたしは妖怪みたいな、君悪いのじゃない…わたしは人間だよ!
あ….
次の瞬間、自分で言ったことにわたしはとてつもない後悔を覚えた。
君悪いって言っちゃった…
草菜も、大河くんも、驚きの表情でわたしを見ている。当然、千江も。
人の気持ちを考えろって言ったのはわたしなのに…
人の気持ちを考えていないのは、わたしの方だった。
恋
……っ!
この場にいるのが嫌になって、わたしはランドセルを片手に部屋にある唯一の出入り口である窓に手をかけ、一気に飛び出した。廊下をダッシュする。階段を、この人生初ってぐらいの速さで駆け下りる。
それからのことは…よく覚えていない。
猛ダッシュして、家路について、我に帰ったのは部屋のドアを激しく閉めた時だった。
恋
…はあ、はあ…
自分が最低なやつだってことは、自分でもわかっていた。
わたしは自分勝手すぎる。本当に気持ちを考えていないのは、わたしの方だ。
悔しくて、涙が出そうになった時…
ピンポーン
いきなり、玄関のチャイムが鳴った。
恋
誰だろ…?
部屋を出て、階段を下りて、ドアを開けると、そこには
恋
……!千江?
千江
千江
はあ、はあ…恋ちゃん、いた…
千江だった。
…千江…
なんで、追いかけてくるの?酷いこと言ったのに…
それを聞く前に…
千江
千江
恋ちゃん、いきなり部屋飛び出して、どうしたの?ねぇ?
千江の純粋な瞳が、わたしを見つめてくる。
恋
…言ったでしょ?あの時?聞こえなかった?ただムカついてただけ。じゃあね。
千江
千江
…うん、それはわかるけど…でも!!!
………っ!??
千江が大きな声を出したので、わたしはドアを閉じるのをやめた。
千江
千江
流石にあれは酷いよ!後からあの二人、泣きそうになってたよ!妖怪だからだって拒んだりしたら、あの子たちがかわいそうだよ!…妖怪なのに…
恋
…だからって言ったってしょうがないでしょ!だいたいあいつら、自分達の都合しか喋ってないじゃん!
千江
千江
それには何か事情があるからかもしれないでしょ!
恋
そうかもしれないけど!あいつら何も人の気持ちを考えてないじゃない!
千江
千江
………!!
いい加減にしてよ!人の気持ちを考えていないって、あの場で恋ちゃんが言ったこと忘れたの!?本当に人の気持ちを考えていないのは恋ちゃんの方だよ!
恋
っ!!
思っていたことを言われ、わたしは言葉を返せなくなった。
激しい勢いで喋った千江も肩で息をしている。
千江
千江
…ごめん……今のは……言い過ぎちゃった…
恋
…うん
千江
千江
…もう今日は帰るね。
恋
………うん
千江が重い足取りで去っていったのを見て、わたしは玄関のドアを閉めて、もたれかかった。
最低な1日になっちゃったな。今日は。千江ともケンカした。
大河くん達に酷いことも言った。
もう、どう償えばいいのかわかんないぐらいに、わたしの頭は苦悩していた。
もう、どうしようもなく悔しくなって…
恋
…う、…ぅう…
一人で、泣いていた。

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