「三年四組の副担任を受け持つことになりました。西條 侑介です」
彼の登場に教室がざわつく。
きっちりとしたスーツを着た彼は、金曜日に会う彼とは別人のように思えた。
「この人だよ!さっき言ってたイケメンの…」
興奮した様子の理沙はパッとこちらを振り向き、そんなことを言ってくる。
周囲の声々に掻き消され、当の本人には聞こえていないだろう。
しかし、正直 反応に困った。
「…あなた?」
「あ…そう、だね…」
心臓が、やけにうるさい。
「どうかした?」
「いや…何にも」
ちらりと教壇に目をやると、ちょうど彼と目が合った。
「…よろしくお願いします」
何度も見たことのある意地悪な笑みを浮かべた男は、どこか意味ありげにそう言った。
誰にも言えない秘密。
時に甘く、時に苦いこの関係。
私と先生。
二人だけの秘蜜は まだ始まったばかり___。
【秘蜜】
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。