それから、先輩は秋の前まで抜け殻みたいな状態だった。
だけど、今日は、どこか、何かを決意したような表情をしていた。
『なんか決めたの?』
「おう。決めた。」
『なにを?』
「俺、リハビリめちゃくちゃ頑張るして。医者に無理だって言われてもサッカーやりたいんだ。だからリハビリに励む。」
『そっか!そっか!頑張れ!!!』
「ありかとうな。だからしばらく会えない。
」
え、
って思った。正直嘘だって思った。
でも、先輩の顔は真剣で嘘を言ってる顔じゃなかった。
だから私もうなずくしかなかった。
『じゃあね、先輩。ひとつだけ約束してね?』
「ん?」
『この冬にグラウンドの上に戻ってきてね』
「分かった。やってやる。だから見とけよな」
『当たり前でしょ!!!』
『ずっと応援してるね。』
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!