「あなたーっ!帰ろっ?」
「わっ、優希!びっくりしたあ~」
家が近くて、親友の優希。
「で、今日は好きな人と話せたの?」
「えっと、今日もだめでした……」
「もう、あなた、もっとがんばらないとだめだ!
もう中3だよ?他の子に取られるよー(笑)」
「大丈夫だよ、絶対取られないから」
「?、なんで?」
「あー、言えない、かな(笑)」
「なんで(笑)」
言えないよ。
先生が、好きだってこと。
「あ、あなたーっ」
何度も聞いている声で名前を呼ばれた。
振り返ると、そこには。
「浅野先生っ?」
「よかった、探してたんだ」
「な、何か用ですかっ?」
「明日の放課、修学旅行の実行委員で集まるから、把握よろしくな」
「あ、はい!」
ラッキー。
私達のクラスでは誰も実行委員に立候補しなくて、仕方なく私がなったけど、担当の先生が浅野先生なんて。
「そんだけ。気をつけて帰れよー!」
「はーい、さようなら」
ぺこりとお辞儀をして、再び前を向く。
その時優希に言われたのが、この言葉。
「ふふ、あなたの好きな人、わかったかも(笑)」
「え、ええ!?」
思わず大きな声を出す。
「コソッ浅野先生でしょー(笑)」
ドキッとして、顔が熱くなるのがわかる。
「ななな、なんでっ??」
「さっき先生と話してる時の様子みると、わかるよ(笑)」
「う〜~!」
「だってかっこいいもんね!
サッカー部の先生で、黒髪の短髪、黒縁のメガネがすっごい似合ってるし!」
「うんうん!!
25歳っていう若さで、仕事に一生懸命で!
贔屓とかしないし、わからないところあったら授業後でもじっくり教えてくれて!
めっちゃ優しいのに、彼女いないなんて……!」
「おお、すごい勢い(笑)」
優希に言われてはっとする。
「うっ、恥ずい……/////」
「誰にも言わないから、安心しなって!」
「優希……、ありがとう!」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。