第10話

やめてやる
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2017/11/12 12:00




恥ずかしくて、精一杯で


余裕がない



そんな俺の気持ちなんて君はお構いなしに
俺の腕をはらって乱暴に袖で涙を拭った



 
「柄にもないこと言わないで……っ、慰めなんて必要ないわ、」


  
あぁ、全く



弱音を吐いたかと思えば急に強気になったり
 


キミはいつも自分の中に答えがあるから



つけ込む隙すら与えない



「ほんっと、可愛くないね」



少しくらい頼ってでもくれれば、
目一杯、甘やかしてやるってのに



「でも、井染くんに好きになって貰える女の子はきっと幸せね」



いつの間にか前を歩く君が言う


俺の気持ちなんてお構いなしに


そんなことを、言うもんだから



「……どうだか、」



君が鈍いのは知ってるけど


それはちょっと、ムカつく訳で



なら、もう想うだけなのはやめてやる


だからさ


もしも、いつか君の目に



その目に俺が映った時は、




その時は──────





覚悟しておけ




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