恥ずかしくて、精一杯で
余裕がない
そんな俺の気持ちなんて君はお構いなしに
俺の腕をはらって乱暴に袖で涙を拭った
「柄にもないこと言わないで……っ、慰めなんて必要ないわ、」
あぁ、全く
弱音を吐いたかと思えば急に強気になったり
キミはいつも自分の中に答えがあるから
つけ込む隙すら与えない
「ほんっと、可愛くないね」
少しくらい頼ってでもくれれば、
目一杯、甘やかしてやるってのに
「でも、井染くんに好きになって貰える女の子はきっと幸せね」
いつの間にか前を歩く君が言う
俺の気持ちなんてお構いなしに
そんなことを、言うもんだから
「……どうだか、」
君が鈍いのは知ってるけど
それはちょっと、ムカつく訳で
なら、もう想うだけなのはやめてやる
だからさ
もしも、いつか君の目に
その目に俺が映った時は、
その時は──────
覚悟しておけ
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!