俺たちの通った小学校を五分ほど歩いた先にある小さな公園
「うっわ~、酷いわね」
草は地面を覆うほど生い茂って、遊具は錆びれて使い物にならない
遊ぶ子供なんているはずもなく
"いらない"場所にされても仕方がない
それなのに、
「予想はしてたけどもう寿命だね。帰る?」
「行こうって言ったのは井染くんよ!少しくらいなら大丈夫」
どこか懐かしさを思わせるのは
隣に君がいるからだろうか
足元を刺すようにむず痒い草の中を進んでいく彼女
「藍沢さん、転ぶよ」
「井染くん真面目すぎ!これくらい平気よ」
「そうじゃなくて、」
刹那、彼女の身体がガクンと傾く
「そこ、坂になってるって言おうとしたんだけど」
遅かった。
見事にズッコけた彼女の後を追って手を差し出す
「もっと早く言いなさいよ!馬鹿!」
「理不尽な。馬鹿はどっちだよ、ほら」
グイッと彼女の腕を引いて立ち上がらせると
勢いでバランスを崩して一度俺の方に傾いた
「おっと、危な」
咄嗟に抱き止めて一層至近距離にいる彼女と視線がぶつかる
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。