あれから数日
「井染くん先生が呼んでたよ、授業始まる前に教室にプリント運ぶようにって。今日、日直でしょ」
「……わかった」
意外にも彼女は"クラスメイト"になっていて
驚いた、というよりは納得してしまっている自分がいた
まぁ、あれだけ言えばそうだよな
「なぁ、やっぱお前ら喧嘩してんの?何かよそよそしくねーか?」
問いかけられたその言葉に今さら気付きかける
喧嘩か。
「あぁ、したかもしれない」
言い合いになることはよくあるけど、喧嘩だと認識したことはなかった
原因は分かりきってる
それでも仲直りの仕方なんて分かるはずもなく
これはこれで、彼女の世界が平和になるならありだと思った
「そういえばさ、藍沢の彼氏ってバスケ部の高野先輩だろ?」
「みたいだね、それが?」
俺は興味無さそうに相槌を打つ
「結構、遊び人って噂だからさ。気を付けろよ」
それだけ言って前に向き直るクラスメイト
「………」
彼女の世界が平和なら、なんて
無鉄砲な君には無理な話で
気の休まらないこの感情を理解するのも
いまの俺には難しかった
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。