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第20話

過去(5)
65
2018/02/19 17:30


どちらかと言えば好意はあった


人として、家族として、"幼なじみ"としての好きならいくらでも───……


それでも不器用な俺と彼女の歩幅がすれ違うのは君が"それ以外"の好きを見つけたからだろうか


"結構遊び人って噂だからさ、気を付けろよ"


クラスメイトの何気ない一言が脳裏に浮かぶ


「泣く羽目になるんだろうな」


放課後、用を済ませた帰り溜め息に乗せた言葉が空気に消えた



そして、嫌な予感は的を得るように実現するものだ



荷物を取りに教室に差し掛かった時、見覚えのある顔が二人、教室内に入っていくのが見えた


藍沢さん?と、もう一人は……



教室の影で耳を澄ます



「なぁ、いいだろ?彼女なんだし」


甘ったるい雰囲気から瞬時に察した


そういうことか。



「ごめんなさい、先輩……私まだそういうのは」



「優しくするから大丈夫だって、ね?」


抱き寄せる腕を彼女が拒む


「やめてください!本当に嫌なんです」



顔見知りの修羅場は見ているだけで気が滅入る



…………


しばらく時間を潰してこようとかとも思ったが同意の上ならまだしも、こんな胸糞悪い光景邪魔したってバチは当たらないだろう



俺はわざとらしく音を立てて教室の扉を開いた───……




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