あなたは空を見つめた。空に描くのは同じクラスにいる楠井悠花(くすいゆうか)の顔だ。美しいその顔を流石に見つめてしまうのは反則だと勝手にルールを作ってしまったのは失敗だった。でも、まあクラスメイトにばれるのよりはいいや、と気を取り直しまた空へ絵を描き始める。
「こらあ!あなた話聞いてんのか!聞いてんならこの問題わかるよなあ?あん?」
クラスでぼーっとしていて浮いている自分には先生でさえも攻撃を仕掛けてくる。丁度こんな具合に。だが造作のないことだ、答えるのに時間は要しない。何故なら僕には彼女のくれた薔薇色のお守りが染み付いているから…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!