プリ小説

第6話

猫の夢
それから、私達は他愛もない話をしていた。
彼の名前はマシロというらしい。
この屋敷にはグランドピアノがあるが、実際に弾いたことは一度もないとか。

「楽譜もあるんだよ」

「それ、勿体無くない?」

「だったら、あなたが弾いてみてよ」

マシロは、少しムスッとしたような顔をした。

「無理だよ」

思わず笑ってしまう。

–––––……チリン…

どこかから、鈴の音がした。

「…何?」

「どうしたの?」

マシロが不思議そうに聞いてきた。
私が鈴の音がしたと言うと、今度は驚いたような顔をした。

「猫でも飼ってるの?」

「いや…この屋敷には、他に誰も…」

なんだか、怖くなってきた。
私は立ち上がり、ドアノブに手をかけた。

「あなた?」

マシロの声は無視して、ドアを開ける。

–––––…チリンッ

「…いた」

目の前を、真っ黒な猫が通り過ぎた。

「待って!」

思わず、私もその猫の後を追いかけた。

「あなた!?」

その時の私は、マシロの声など聞こえていなかった。
ただ、この猫を追いかけなきゃいけない…そんな気がしていた。

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テロル
テロル
最近朝布団が自分を離してくれません。 そう言ったら友達に毎朝モーニングコールをされるようになりました。 彼氏の浮気を許さない彼女でしょうか…?
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