「おやぁ…?」
入口の方から声がして、視線だけをそちらに向けた。
「ましろ…と、言ったのかい?」
そこには、白髪の優しそうな雰囲気のおじいさんが、杖を片手に立っていた。
「え…は、はい」
突然のことに戸惑いながらも、私は答えた。
そうしたら、おじいさんは嬉しそうに何度も頷いた。
「そぉかそぉか…ましろ君を、知ってるのか」
「え?」
おじいさんの言葉に、私は耳を疑った。
「おじいさん…マシロ、君…を、知ってるの?」
私の問いかけに、またおじいさんは何度も頷いた。
にこにことしながら、話し出すおじいさん。
「ましろ君はなぁ…毎日、毎日来てくれるんじゃよ」
「毎日?マシロが、おじいさんに会いに来るの?」
身を乗り出して聞く私に、おじいさんは不思議そうに言った。
「お嬢ちゃん…夢を見ていたのかね?」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。