おじいさんの言葉を理解するのに、少し時間がかかった。
「…おじいさん…それ、どういうこと?」
やっとの思いで声を絞り出し、そう聞くと、おじいさんはにこにこと笑いながら、
「いやぁ…何、気まぐれじゃて」
その言葉を聞いて、また私が質問をしようとした時、誰かの声がした。
「田中さん?」
田中さん…あぁ、このおじいさんのことか。
振り返ったおじいさんは、その声の主を見て一言。
「おお…ましろ君」
マシロ?
私は、思わずその声の主を探した。
入り口に姿を現したのは、スラッとした高身長の男の人。
「田中さん、また病室を抜け出しましたね?」
「はてぇ…?何のことかな?」
「はぁ…まったく、探し回る看護師さん達の身にもなってくださいよ」
その男の人は、おじいさん…田中さん?の背中に手を添え、歩き出そうとした。
「あ、あの!」
私は、思わず声をかけてしまった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。