プリ小説

第2話

10年後
…夢、儚きもの。
この言葉を初めて呟いた日から10年が経つ。
あの日夢の中でもらったこの言葉をなぜかいつまでも忘れられない。高校の授業中だったり、部活中だったり、電車の中だったり、いつでもふとした時に浮かんでくる言葉。
まるで、脳みその中に夢の記憶ごと印刷されているかのようにはっきりと思いだすのだ。あの大男の声や喋り方、優しく頭を撫でられる感触まで。
あの時は大男だと思っただけで、今会ってみれば普通の男性なのかもしれない。それでも私にとってはいつまでも大男で、いつまでも見上げて話す想像しかできない。

あの時意味が分からなかったこの言葉は、今でも私の頭の『意味不明リスト』に三角関数と一緒に押し込まれている。


ん、三角関数…?あれ、明日ってもしかして…
あなた

ああ!明日小テストあるんだった!!

私はあの夢のように項垂れた。違うところはバンッと音を立てて机を叩き、勢いよく立ち上がったこと。イライラした時に周りのものを叩いてしまうのは、気づけば私のくせになってしまっている。
さな
うわ!!もう!なに?!
あなた

あぁーもう間に合わないってーー!

バンバンと机を叩く音と、私の悲しみの声が空間に響く。
さな
ちょっと落ち着こう!あーあー、筆箱ひっくり返っちゃったよー
あなた

ふでばこ…?

すっと叩いていた手を止めて目の前を見る。机の上には数学の教科書とノート、シャーペン、消しゴム…。床には私が吹っ飛ばしてしまった筆箱の中身が散らかっていた。
あなた

今私たち…

さな
数学の勉強してたの。あなたが三角関数が分かんないって言うから教えてたの
あなた

うーん……

さな
ねえ?またなったの?
さなの質問に頷きだけで返す。

最近、なぜか記憶が無くなることが多くなった。7歳頃から度々発症していたが、そんなに頻繁ではなかったので発症したら病院に行くだけで充分だ、と医者に言われていた。もちろん、さなは長い付き合いのためよく理解してくれている。が、そんなさなも心配するほど、ココ最近はたくさん発症しているのだ。
さな
…病院、行ったほうがいいんじゃないの?
さな
どうせまだ行ってないんでしょ?
行ってないどころか、親にも相談していない。そんな事でさなにほかの心配をかけるわけにはいかない。
あなた

うん、今度行こうかしら

笑って返事をしたのに一方のさなはやれやれというふうにため息をついた。

これは…バレている。

嘘をつくと語尾が不自然になってしまうのだ。バレてもしょうがない。

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゜すずり。
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゜すずり。
年中無休で低浮上です 推しにファンサ貰った瞬間だけ 脳から取り出してダビングしたい。❤ 妄想系書かない🙅× 恋愛系は練習中です…期待もほどほどに。 ARASHIAN.Hooligans.Moonwalker.
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