さなは再びため息をついた。わざとかと思うほど大きく息を吸いこみ、空気の塊をゆっくりと吐き出した。本気で私のことを気にかけてくれているのがひしひしと伝わってくる。
やっぱり、そろそろ病院行かないとな…
お母さんにも話さなきゃ…
語尾が不自然出ないことをしっかり確認し一瞬表情を和らげたものの、そのあとさなは
そう短く言って、私の横腹を小突く。
私からすればなにがバカで、なんで小突かれたのか、全く分からない。
"あの親父"というのは、私の戸籍上父親にあたる人物の事だ。ただし血縁関係では彼は父親では無い。本当の父親は私が小さい頃に天国へ旅立った。その後しばらくしてあの男が我が家に父親としてやってきた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。