第10話

大男の手記④
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2017/11/14 14:49
ボクはあの日、Q氏の夢にお邪魔してから、密かに彼女を観察し続けていた。
それはまるで親のような気持ちで見る時もあれば、ボーイフレンドのような気持ちで見るものもあった。ひょっとしたら、娘を見守る彼女の本当の父親と同じ気持ちでいたのかもしれない。
何よりも心配で、任務の途中に見えた笑顔はどんな疲れも吹っ飛ばしてくれるほど安心できるものだった。
初めて彼女を見て10年経ったある日、神からあることを告げられた。
お主が気にかけている〈コードネーム:Q〉だが、最近変わったことはないか?
大男
そういえば最近、前より笑わなくなりました。それに、記憶が一時的に無くなることが頻繁に……
それを聞いて、神の顔のシワがいっそう濃くなる。
もはやシワシワを通り越している。
ボクも将来こうなる運目じゃなくてよかった、と心から思った。

だけど、そんな呑気なことを考えている場合ではなかった。
〈コードネーム:Q〉は今、夢と現実の狭間に生きている。
大男
えっ!?
夢と現実の狭間、それはとても危険な状態。
私からお願いさせてほしい。どうか彼女のことを、そなたの嫁として迎えてくれないか。
大男
……え?!
その願いは唐突なものだった。
でも、すぐにもちろんです、と言いそうになった自分もいて、『ああ、あなたが好きなんだ』と思い知った。
彼女を救うには、こちらの世界の人間として転生させるしかない。転生させるには、こちらの世界の人間と婚約しなければならない。
……ずいぶん前から、そなたは彼女に惹かれていただろう?
もちろん、否定はしない。
大きく頷いた。
なら決まりだ。
今すぐ彼女をここに連れてこい。
全世界を支配する、神である私の命令だ。
大男
は、はいっっ!!!
そうして、ボクは彼女の元へと行った。
最近で一番、元気がなくフラフラしている。
さっと夢の中に入り、彼女が置かれている状況を説明する。
そして、勇気を出してあの言葉を伝えた。
大男
雲の上で、ボクらの住む世界で転生してみない?

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