ボクはあの日、Q氏の夢にお邪魔してから、密かに彼女を観察し続けていた。
それはまるで親のような気持ちで見る時もあれば、ボーイフレンドのような気持ちで見るものもあった。ひょっとしたら、娘を見守る彼女の本当の父親と同じ気持ちでいたのかもしれない。
何よりも心配で、任務の途中に見えた笑顔はどんな疲れも吹っ飛ばしてくれるほど安心できるものだった。
初めて彼女を見て10年経ったある日、神からあることを告げられた。
それを聞いて、神の顔のシワがいっそう濃くなる。
もはやシワシワを通り越している。
ボクも将来こうなる運目じゃなくてよかった、と心から思った。
だけど、そんな呑気なことを考えている場合ではなかった。
夢と現実の狭間、それはとても危険な状態。
その願いは唐突なものだった。
でも、すぐにもちろんです、と言いそうになった自分もいて、『ああ、あなたが好きなんだ』と思い知った。
もちろん、否定はしない。
大きく頷いた。
そうして、ボクは彼女の元へと行った。
最近で一番、元気がなくフラフラしている。
さっと夢の中に入り、彼女が置かれている状況を説明する。
そして、勇気を出してあの言葉を伝えた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!