殺すために、女を捕まえた。
夜の山道を歩いているところを襲い、倉庫に連れてきた。
人里離れたこの倉庫は、密閉空間であるから悲鳴さえ外へ漏らさない。かりに漏れたとしても、それを聴く人間などちかくにはいないのだ。
とりあえず誰でもよかった。
ただ殺したかったのだ。
『極上の味』
ぼくは、どこにでもいるような平凡な人間だ。
今年22になるというのに、職もないし、家もない。
残された借金は、数百万。
夢と希望はすへて失った。
こんな自分は生きていても仕方がない。
もう死んだほうがマシだ。
けど、このむしゃくしゃした感情をなくして死にたい。
ーーそうだ、だれかを殺そう。それから、自分も死のう。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。