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ガスマスクを装着したまま、ぼくはしばらく立ち尽くしていた。
それから、床に倒れている女を見下ろす。
催眠ガスが効いているようで、ピクリとも動かない。
顔を見た。
わずかに眉間へシワを寄せ、まぶたは強く閉じている。
きれいな顔立ちだ。
歳は、10代後半といったところか。
化粧でごまかしていない繊細さがある。
今度は、顔から下を眺めた。
タイトスカートに、白いワイシャツ。ボタンの隙間から、レースの下着が見えた。
胸もとから覗く白くてきれいな肌。
透きとおっていて、ほどよい肉づき。
触れると気持ちよさそうなーー
ぼくは、握りしめていたナイフを置いた。
べつにやましい気持ちもなかったし、そうする予定でもなかった。
けれど、一度湧き出た性欲をおさえることはできなかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。