「そうですね。」
「否定しないんだ。」
「すぐバレる嘘をついても意味ないので。」
「確かに、二十歳には無理あるしね。
一人かと思ってちょっと心配だったけど、サクラさんの連れなら大丈夫そーだね。」
そう言って笑う彼は席を移動することもなく、話し掛けてくる。
10分ほどたった頃、迅ちゃんがドレス姿で駆け寄ってきた。
「奈乃!何もされてない?」
「いやいや。話し相手になってただけなんだけど。」
「そうやって、女口説いてんでしょ?言っとくけど奈乃に手だしたらアンタの大事なとこ潰すわよ?」
「…………まじで洒落になんないからやめてよ。ていうか、その子ってサクラさんの何?親戚?」
「この子は私の可愛い姪っ子よ。」
迅ちゃんはお母さんの弟、私の叔父にあたる。
「そうなんだ。でもこんなとこ出入りしてたら心配されるんじゃない?」
「………色々あるの。家庭の事情ってやつよ。それより、アンタ暇よね?」
「決めつけないでほしいな。暇だけど。」
「じゃあ、ちょっと頼みたいんだけど奈乃がここにいるとき出来れば、今日みたいに話し相手になってくれない?」
「いいけど。さっき手だしたらとか、凄い言ってたのに俺に頼むんだ。」
「それはまた別の話し。知ってる人が近くにいた方が安心じゃない。
変なのに絡まれそうになってもすぐ助けられるし。」
「サクラちゃん。私、平気。自分の事だし自分で対処する。」
さすがに、赤の他人にまで迷惑は掛けられない。
「話し相手になるくらいなら俺は構わないし、迷惑とか思ってるなら気にしないで。」
「なんなら、私がずっと側にいたいくらいなのよ!」
ギューっと抱き締められる。
迅ちゃんは私を想って言ってくれてる。
優しくて、優しくて、
私には勿体ない。
「……………ありがとう。」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!