正直、“抱いて”と哀訴され驚いた。
しかし好きな人にそんなことを言われ、理性を保てるはずもなく。
俺はゆっくりと自らの昂りを蜜壷に沈めていった。
「…ッ、ぁ…ぅ」
奥へ進むほど 彼女は苦しそうに眉を顰める。
バラバラに砕け散った理性をかき集め、俺は一度 動きを止めた。
「…痛い?」
「ん…平気」
頬を赤く染めた先輩はそう言って 優しく微笑んで見せたが、それが本心ではないことくらい分かる。
「本当のこと言って。…あなたのこと、傷つけたくない」
触れた先輩の体は どこもかしこも柔くて。
乱暴にすれば、壊れてしまうような気がして。
俺は…少し怖かった。
「ちょっとだけ…苦しい」
「じゃあ、馴染むまで…このまま」
「…ごめんね」
そんな顔をさせたい訳じゃない。
そんな言葉を言ってほしい訳じゃない。
ただ俺は、先輩を…
「慎く…ん、ッ…ぅ」
貪るように奪った唇。
今はもう、何も聞きたくなかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。