エーシュカをなんとかして部屋の外に出したいんだけど、猫の姿だとひょいひょい逃げ回るから一向に捕まる気配がない。
そうこうしているうちに、もう学校へ行く時間にまでなっていた。
朝から本当に最悪……私は力づくでエーシュカを部屋の外に出し、
支度をしてから慌てて家を飛び出した。
ない!ない!ない!私のお弁当がなーい!
これは絶対家に忘れてきたパターンだ…
うう。もう今日はとことんついてない。
はあ、と大きくため息つくと、
クラスの誰かが、
と、興奮した様子で言った。
その声を聞いた他のクラスメイトらがなんだなんだ、と一斉に窓の外から校門を覗き込む。
…………ふーん金髪の男かぁ…
もう今日は一切金髪見たくないday。
私は人間の姿をしたエーシュカを思い出し、またため息をつく。
そんなどんよりした私とは裏腹に、クラスのボルテージは最高潮に達したらしい。
誰かが窓を開けて「どうしたんですかーー!!」と外にいる金髪の男に叫んだ。
友達が私のことを手招きするから、重い腰をあげて窓から校門を覗き込む。
すると、見覚えのあるお弁当袋を持った、見覚えのある金髪の男が、そこに立っていた。
まずいまずい…兄弟のいない私に兄がいるわけないし、彼氏持ちなわけでもない。
エーシュカのことが完全にバレた今、どうやって周りの友達に説明すれば良いの…
そんなことを考えつつ、私はエーシュカの元へと走った。
そんな走って来た私に気がついたのか、エーシュカは笑いながら手を大きく振り、「あなたちゃん!」と叫んでくれる。
猫とは思えないくらい、愛嬌が良い。
ちらり、と後ろを振り返れば窓からはクラスメイトからの期待の視線。
うわぁ…絶対カレカノだって思われてるよ…
早くその場から逃げたくて、私はエーシュカが持っていたお弁当袋を自ら奪うと、
と言うもの、内心は申し訳ない気持ちでいっぱい。こんなヨレヨレの服で来てくれて。(多分きっとこの服しか持っていないんだろうけど)
私はそそくさくその場を立ち去ろうとすると、エーシュカは私の腕を掴むと、ぐいっと自分の方へと引き寄せた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。