午後の授業は、エーシュカの事しか頭に浮かばなくて、何度先生に注意されたことか…とほほ。
小さい頃から、そして今日まで何度も何度も助けてもらってたんじゃ、私はもうエーシュカに大口は叩けない。むしろ毎日土下座しないといけないレベル。
これはもう、感謝の気持ちを盛大に表現するために、「エーシュカ様」って呼ぶべきなのかもしれない。…絶対イヤだけど。
…って、あ。そういえばエーシュカと一緒に帰るっていう約束、してたんだっけ。
これはまずいなぁ。友達に見られたら完璧にカレカノ扱いされる。絶対明日黒板に大きく相合傘書かれちゃう。
それはやだやだやだ。
これは友達から見えないところでエーシュカと会わないと…
友達が昨日放送してたテレビの話をしてくれるけど、正直全く頭に入ってこない下駄箱に近づくほど焦りが募る。
そして、下駄箱についたところで、周りがザワザワとしていることに気がつく。
友達も、それに気がついたようで、
そう言われて、心臓がどきりとする。
そしてゆっくり、その言われた方へと視線を向けると、
……エーシュカだ。
エーシュカが校門をくぐり、真っ直ぐ私の方へと歩いてきている。
金髪だから、太陽の光が当たるとキラキラして見える。
そんな突然の金髪の登場に、周りの女子たちが次々に黄色い悲鳴をあげた。
こうやって私がどうしようどうしようとアタフタしている間にも、エーシュカはどんどん下駄箱へと向かってくる。
そして、
私の名前を呼び、ふわっと笑うから、まるでどこかのお姫様になった気分。
今だけ王子様フィルターがかかっているような気がする。
ただ、周りの視線が、痛い。
「早く帰ろう」とエーシュカが私の手を握ろうとすれば、隣に居た友達が、「待って待って待って」と間に入ってきた。
ええっと、なんて答えたらいいんだ!もう早くこの場から立ち去りたい!今すぐに!
と、早口で答え私はエーシュカの腕をぐいっと掴むとそのまま一目散に学校を飛び出した。
「あなたちゃん?あなたちゃん?」とエーシュカが私の名前を呼んでくるけど、今はそれに答えている余裕はゼロ。髪の毛がぐっちゃぐちゃになろうが、走っている今の顔がどれだけブサイクだろうが、今は関係ない。
早く家に帰りたい!ただその一心で、私は走り続けた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!