ああ…やっと家が見えてきた…
と少し走るスピードを緩めたところで、エーシュカが「ねえあなたちゃんってば」と呼んでいたことに気がつく。
私がそう謝ると、エーシュカは
" もうすぐ家に着いちゃうけど、俺この姿のままで大丈夫? "
……おっと、危ない危ない。
確かにこの姿で家に入ったら不審者or私の彼氏or不審車になりかねない。
完全に忘れてた……近所の人に私と、エーシュカの姿を見られていないだろうか。
" あそこの家の娘さん、金髪で背の高い男と手を繋いで走っていたのよ "なーんていうことがお母さんの耳に入れば、絶対追求されちゃうし、
「違うの!あの人は私の家の猫のプリンなの!」
なんて言っても信じてもらえない。ただ私への不信感が増すだけ……
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私は自分の部屋に入って早々ベッドに体を投げる。
猫のエーシュカは「にゃあ」とひとつ鳴いた。
ピロン
携帯の通知音が鳴った。
ピロン
また通知音が鳴る。
ピロンピロン
ピロンピロンピロン
もう疲れてるのに…なんなの〜…
そう思いつつも、手は勝手に携帯を掴んでいた。
通知音の正体は、友達からのメッセージだった。
そのメッセージとともに送られてきた何枚もの写真。
さっきの私とエーシュカだ…
全速力で走る私と腕を掴まれた状態のエーシュカが映っている。
と、また別の友達からメッセージが届いていた。
1番避けたかったことが、今現実になっている。
もう絶対明日、みんなに冷やかされる…!
私はとっさにエーシュカの名前を呼んでいた。
私がそう声を張り上げると、エーシュカは少し不満そうな顔をしていた…気がした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!