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第16話

深紅の薔薇 ②

" 王子 " と呼ばれるのは何年振りだろうか。
嫌な気持ちにはならないが、どうも、自分が王子と呼ばれるのはしっくりこない。


城に入ってすぐ、城の中にいた家政婦や、執事らが俺の顔を見るや否や、顔を強張らせる。
まあ、無理もないだろうね。だってこの国の約束を平気で、そして繰り返し破るようなやつだから、みんな危険人物扱いだろう。


「父は、今いるのか」


階段を上り、近くで掃除をしていた家政婦に声をかける。
案の定、俺の顔を見た家政婦はびくっと体を強張らせ、「い、今は、奥のお部屋に…」と片言状態。これがまあ面白い。


さて、父は俺が「次期国王の座を退きたい」なんて言ったらどんな反応をするだろうか。

家政婦に言われた通り、奥の部屋をノックする。


「……父さん、僕だ。エーシュカだ」


部屋の中から、「入れ」という声が聞こえて、俺はドアノブを回す。


扉を開けると、真ん中にある大きなソファでくつろいでいるのが、俺の父親である。


「……なんだ、俺に何か用でもあるのか」


父は表情1つ変えずに、ただワインを傾けているだけ。
ワインは深紅の薔薇の花のようで、ワイングラスを傾ければ、シャンデリアの光に照らされ、さらに透き通って見える。


「……俺は、次期国王なんかなる気は更々ない」


「ふっ、またその話か」
「…あの婚約相手がそんなに嫌か?容姿も、家柄も完璧なはずだ。これ以上なにを望む?」


……そうだ。確かに俺の婚約相手は文句の付け所がない美人であり、家柄も良い。
でも、俺はそんなの望んじゃいない。国王になってこの国を治める気もない。俺は、こんな貴族社会に縛られたくはない。自由に生きたいんだ。


そして、この世界ではなく、
" 人間の世界 " で。


「お前が何を言おうと、俺の跡を継ぐものはお前だ。人間の世界でのうのうと暮らすのもあと一年」

" 一年後には、しっかり働いてもらうぞ。お前が国の規則を破り続けるせいで俺の面目は丸潰れなんだからな "


そう父は言うと、ワインをぐいっと飲み干し、また、


「……あと、くれぐれも、" 人間に恋をした " なんて馬鹿げたことを言うんじゃないぞ」


そう俺に言い放つと、奥の部屋へと入ってしまった。


………くそ。これじゃああの日、この国から逃げ出した時とまるで変わらない。俺の意思に耳を傾けてもらえないままだ。
何も変わらない。時間だけが過ぎていって、あなたへの気持ちが募るばかり。



どうしたら、いいんだ。



しかもあなたに何も言わずここに来てしまったからな……
今更帰っても、もしかしたらもう俺の居場所はないかもしれない。
いやでもあの " 永瀬 " っていう男が家に転がり込んでいたら?
それはまずいな…

自分のプライドなんて捨てて、家に帰るしかない。
また俺は、来た道を戻ることにした。

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