学校が終わり、私は早足でエーシュカのところへ向かう。
校門を出て、少し歩いたところで待ってるね、とエーシュカは言ってくれたのだが….
茶髪の女の子三人組が、エーシュカの周りを取り囲んでいた。
格好を見るからに…他校の人?少なくとも私の学校の制服ではない。あと、こんなスカート短くしないし!
三人組は携帯片手に " お兄さん連絡先交換して〜 " とエーシュカにグイグイ迫っていた。
なんなの!この状況は…
きっとエーシュカが金髪だからそういう類の男に見えたんだろうけど、エーシュカはそんな人じゃない。いや、人じゃないか。猫か。この人は私の飼い猫です!って言ってやりたい。
……あ、でも、猫の姿をいいことに私の着替えを見ていたぐらいだから…スカートの短いお姉さんに絡まれたら、私みたいな芋女はほっとかれるかもしれない。
そしてエーシュカも女の子達に絡まれてるのにも言わないから、きっとまんざらでもないのだろう。
………私が先約だっていうのに!ばか!
勇気を振り絞って、馬鹿みたいに大きな声を出してしまった。…ほんと、ばかなのはどっちだ。
私の馬鹿みたいに大きな声を聞いて、エーシュカとその女の子達も一斉に私の方を振り向く。すると、私の顔を見るなりエーシュカは、その女の子達の間をすり抜けて私の隣に来ると、いきなり腰に手を回し、
と、サラリと言い放った。
見上げるとすぐそこにエーシュカの顔があって、急に心臓がドキドキしてきて、もしかしたらエーシュカに聞こえてるんじゃないのか。いや、前の女の子達にも聞こえてしまってるんじゃないのか。そう考えれば考えるほど、心臓の音が早くなる。
そんなエーシュカの言葉を聞き、三人のうちの一人の女の子が前に出てきて、
きっとこの子が三人組のリーダーなんだろう。その女の子が反論したと同時に後ろで二人がそうよそうよ!と口を揃える。
それでも、エーシュカは私の腰に腕を回すことをやめず、むしろ更に自分の方へ引き寄せると、私の頭の上に口付けを落とした。
触れられたところから指の先にまで体が硬直する。そしてどんどん熱くなるのが分かる。やばい、今絶対顔真っ赤だ。やだ、見られたくない。穴があったら入りたい!一生出たくない!
私がこんなにも恥ずかしくなっているというのに、当の本人は涼しい顔をして、女の子達の方をキッと睨むと、女の子達の肩が跳ね上がる。そしてまたエーシュカが口を開いた。
こんな目つきのエーシュカ、見たことがない。
………す、好きな奴?この瞬間、私の思考回路は完全にショートした。もう使い物にならない。
そして女の子達は、この場にいるのが恥ずかしくなったのか、舌打ちをして小走りで逃げてしまった。
女の子達の姿が見えなくなったところで、ハッと我に帰る。そういえば今は下校時間。辺りを見渡せば、下校途中の生徒たちが私たちを見て、すでに大騒ぎしている。
それにエーシュカも気が付いたのか、私の腰に回していた腕をパッと離した。
" この金髪の人、この前の人だよね? "
" やばいめっちゃイケメン! "
" あの女の子、◯組の子だ! "
……本当にまずい!私とエーシュカは " いとこ " って周りに通してたのに……!
今度こそもう、言い訳は聞かない。
というよりもう、誰も信じてくれないだろう。
うう、もう私学校に行けないよ〜!!
私はエーシュカを置いて全力疾走。エーシュカも慌てて私を追いかけるように走り出した。
___ " 俺の好きな奴 "
さっき言われた言葉が頭をぐるぐると駆け巡る。
………あれは、本気なの?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。