私はぬいぐるみに顔を埋めたまま、エーシュカの言葉を待っていた。
でも訪れるのは、静寂ばかり。
自ら行動しろ、っていう神様のお告げなのか、よく分からない。
でも今のままじゃ、エーシュカとも永瀬くんとも、分かり合えない。このままは、嫌だ。
私はぬいぐるみから顔を離した。
でもエーシュカの目を見ては話せなくて、天井に、言葉を放つ。
言えたぞ私。頑張った私。天井と会話しているようだけど、これが私の限界。マックス。私の声が、天井を跳ね返して、きっとエーシュカの耳に届いている。
エーシュカは少しこめかみを書きながら、少し息を吐いた。
" 俺は愚か者だよ " と最後に付け加えた。
いきなり言葉がポンポン返ってくるから、少し噛み砕くのに時間を要した。
" 猫なのに "
今一番、触れると壊れちゃいそうなくらい、脆い部分。
でも1番核心に近く、いつか触れないといけない。
ああ、やっぱりあなたは猫なんだ。
そして私はあなたにとって、飼い主なんだ。それ以下もそれ以上もない。
でも、エーシュカの言葉を私が受け止めてあげないといけない。
私は、飼い主だから。
きっともし、あなたが猫じゃなくて、
普通の人間だったら。
きっと今、私は喜びに満ち溢れているだろう。
それに気がついた時、私も自分自身を
" 愚か者だ " と思った。
人間のエーシュカに出会って、まだ日は浅いけど、私は知っている。
あの幼い時から、私は心のどこかで " 助けてくれた金髪の男の人 " に特別な感情を抱いていたことを。
そして、その人の正体を知った時、私はその人に恋をするだろう。
エーシュカは、私の言葉の意味を聞いては来なかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!