きっと永瀬くんは気がついてるんだ…
私もエーシュカの事、ただの猫として見ていないこと。
だからあんな " 奪いに行く " なんて言葉を…
人生で三回モテ期がくる、とか聞くけど、私の人生のモテ期は今のこの瞬間に凝縮されている気がしてならない。
このままモテ期が終わって一生独身だったらどうしよう……
きっと今のこの数学の時間より、私が一生独身かもしれない説の方が大事だと思う。
早く、エーシュカ帰ってきてくれないのかなあ…
猫の国での" やること " って何だったんだろう。
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ミーシャが、父の前で盛大にワインをぶちまけた。
どんなにミーシャ側の親が謝罪の言葉を述べても、俺の父はヘソを曲げたまま、
" い、今すぐ婚約を取り消せ!今すぐだ! "
まさか、こんなに早く事が進むとは思ってもみなかった。
きっとこれも、ミーシャの演技力の高さのおかげだろう。
そして、一旦この国を出ようとした時だった。
" 待て、エーシュカ "
父に名を呼ばれた。
ミーシャには先にあっちの世界へ帰っていてほしい、とだけ伝えて、俺は父と共に、父の部屋へ足を運んだ。
父はいつものソファーへ深く腰をかけ、そして、白ワインを口にした。
……ミーシャ?
なぜ今ミーシャの名前が出てくるのか。
俺は人助けなど全くしていない。
…………!
それは、お互い様の話だったじゃないか。
俺も、人間が好きで、ミーシャも人間が好き。今回の話はお互いがお互いを守るためのものだったのに。
さすが、あのミーシャだ、と思った。
父はまた白ワインを傾けると、そのまま飲み干してしまう。
父の、喉が鳴る音だけが聞こえる。
まさかの言葉だった。
婚約が破談になればそれでいい。あと少しの間しかあなたちゃんの側にいれなくてもいい。それしか俺の頭にはなかった。
俺は生まれて初めて、誰かに頭を下げた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。