" ねえ…ほんとどこであんなイケメンと知り合ったの? "
" 私にも誰か紹介してよ〜〜 "
下駄箱で靴を履き替えながら、友達がブーブー言っている。
最近はずーっと口開けばいいこればっかり。
靴を履き替えて、私少し誇らしげに、友達に手を振ってみせる。
私は少し小走りに、学校を出る。
なんだかんだ文句を言いながらも、友達はじゃあまたねー!って。
幸せだなぁ。とっても。
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差し出された相手の手を握り、私たちは歩き出す。
その時気がついた。…あれ?前方に見えるのは、永瀬くん?楽しげに友達と会話しながら歩いていた。
すると、私の手を握っていた恋人が、私の耳元で、
" 永瀬に見せびらかせてやろうよ "
と、囁き、私の腕を引っ張り走り出す。
バタバタと、走る足音が聞こえたんだろう。
不思議そうに後ろを振り向く永瀬くん。
そして私たちの顔を見て、面白そうに笑う。
そう言って、隣にいた友達に茶化されていた。
こんな風に想ってくれる人がいて、幸せで。そして今、こうして好きな人と手を繋いでいられる事も、幸せだ。
そのまま永瀬くん達の横を逃げるように走る。勝ち誇ったような笑みを浮かべる恋人の金髪が、眩しい太陽に照らされて、キラキラしている。
……ううん、もしかしたら、彼自体、私にとってはキラキラしている存在なのかもしれない。って、ちょっと惚気ちゃったけど。
そして私は、真っ直ぐ家には帰らず、少し公園を寄り道する。
いつもここで、ブランコに乗ったり、ベンチに座って話をしたりする。
今日はまだ、小学生も遊びに来てなくて、公園にいるのは私たちだけ。
私たちはそのままベンチに腰をかけた。手は、繋がれたまま。
私がそういうと、彼はクスクス笑う。
" ひどいよ〜 " と私は繋いだ手をブンブン振る。
彼の手は、大きくて、あったかい。
私は、少し意地悪をしてみる。どんな反応するかなぁ、って。
そうしたら、彼は私の方を見て、少し、真剣な表情を見せるけど、何も言ってこない。
少し意地悪、しすぎちゃった、かな…
そう思って謝ろうとすると、彼は私の頬を軽くつまみ、
" エーシュカ、だろ? "
さっきまでの真剣な表情とは一変。またクスリと笑う。その顔が、あまりにもかっこいいから、私は直視できなくなって、慌てた視線をそらす。
すると、彼もすかさず反撃、と言った感じで私の体を自分の方へ向ける。
彼は満足そうだった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!