えっ―。嘘でしょ……。今までこんなことは一度もなかった。どうしよう。どういう風に返せばいいんだろう?
「いおねー!」
「んー……。」
「起きて!一緒に学校行こー?」
そうやって、朝起こしに来たのは冴那だった。冴那は紗世と違って凄く活発的だ。紗世は頭がいいけれど、冴那は運動神経がすごい。
「いいよ。紗世は?」
「紗世はご飯食べてるー。」
と、言って冴那はリビングに戻った。……というか今は何時なんだろう?スマホの電源をつけて時間を見ると7時だった。
「まだ大丈夫だな。」
そう言いながらスマホのロックを解除すると、昨日の虎太朗とのLINEの画面が開いた。
ーそうだった。昨日は虎太朗にあんなことを言われて、なんて返そうと考えていたら寝落ちしたんだ。朝から謝らないとなぁ。でも気まずいな、れおには相談出来ないし、かと言って伽耶に言うのも……。まあいいや。ご飯食べよ。
「おはよー。」
顔を洗い、タオルで拭きながらリビングに入ると、紗世と冴那、なつにい、れおがご飯を食べていた。なつにいにしては早い。朝から何かあるのかな?
「なつにい、今日は早いんだー。」
「ちょっと最近無理やり部活に入れられてな。それで今日は打ち合わせ。」
「そっかそっか!」
なつにいの顔は相変わらず腐ってるなー、とか考えてたら……。
「いおー。昨日なんかあった?(ニヤニヤ)」
「いや知ってるでしょ。ニヤニヤしないでよね。」
れおはきっと知っている。虎太朗が相談でもしたのかな?
「いおねー!れおにー!行くよー?」
「分かったー。」
紗世と冴那が急かしたからあたしは急いで学校に行く準備をした。
冴那が走って玄関をとび出ると、
「なつにい、いってきまーす!」
「あいよ。」
「んじゃ、兄ちゃん、行ってくるわ。」
「あいよ。」
「行ってきます。」
「なつにい、食器とかよろしくー!」
「あいよ。」
冴那に続いてみんなが家を出た。紗世が元気なさそうなのは、ただ単に眠いからだ。
「じゃーねー!」
「はーい。」
中学校よりも小学校の方がやや近い。紗世と冴那を見送ると、あたしとれおは中学校に向かった。
学校に着くと、ちょうど伽耶と一緒になったからあたしたちは二人で教室に入った。
そして今日もあっという間に1日が過ぎ去った。放課後、あたしと伽耶とあなたちゃんと奏は日直だったから、あたしと伽耶は日誌を書いてあなたちゃんは先生にクラスの提出物を出しに行った。奏は学校中をなぜかグルグルまわった。
「伽耶~。笹本があなたちゃんを好きってことはわかったけど、奏はどうなんだろう?」
「どうだろう?まあ、奏もいつか気付くんじゃない?」
「だね!あっ、日誌書き終わったし、先生に出しに行こう?」
「ああ。」
あたしと伽耶はようやく日誌を書きおわり、職員室に出しに行った。あたしの学校の造りはまるで迷路のようだから1年のあたしたちは迷ってしまう。特に職員室は1年棟からは遠い。今日も伽耶と二人で職員室に行くのは不安だった。
職員室に行く途中、やっぱり迷ってしまった。
「伽耶、ここどこだっけ?」
「……。確か、資料室とかがある棟だな。」
「やばい……。とりあえず資料室には地図があるから、見てみよー?」
「うん。」
あたしたちは、資料室に入ろうとした。すると中から話す声がした。伽耶が静かに中を覗くと、あなたちゃんと奏がいた。
「いお、静かに見よう(笑)。多分気づかないぞ(笑)。」
「うん(笑)。」
あたしは伽耶が覗く上から覗いた。
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「奏、何やってるの?」
「んー。暇だったからここで遊んでた~。」
「そ、そうなんだ。」
「なあ、あなた。お前さ、好きな人いんの?」
「え、んー。いないけど?そういう奏はどうなの?」
「いるよ。あててみたら?(笑)。」
えっ、奏はやっぱりいたんだ。あなたちゃんだと思うけど。どうなんだろう。でもあなたちゃんは鈍感だから、当てられないだろうな。
「もしかして……。まだひなののことが好きとか?あ、それとも岩本玲奈とか?」
「みんな違う。」
ほら。あなたちゃんは当てられない。
「わかんないよー!教えてー?。」
「んー、やだー。」
そう言うとあなたちゃんは奏を叩き始めた。伽耶は隣でクスクスと笑っている。まあ、イチャイチャしているのだから笑うのも無理ない。
―ガタン!
奏が資料室の棚にぶつかってすごい音がした。その驚きでなぜかあなたちゃんまで倒れている。大袈裟だなぁ。
「おい、大丈夫かよ。」
「全然!この様子で大丈夫なわけないじゃん!。」
あなたちゃんは床に手をついたまま、大声で叫ぶ。
「ほら。」
「!!!!」
あなたちゃんより先に伽耶が反応した。それもそうだ。奏があなたちゃんに手を差し伸べたから。
「ん。離さないでよ?。」
「なわけ。」
おおぉぉぉおおお!という心の叫びを必死に堪える。あなたちゃんは奏の手を掴んだ。
「んも!これも奏のせいなんだけど?ありえない!。大体―……。」
と、言いかけたところで奏が手を引いてそのままあなたちゃんを自分の方に引き寄せて抱きしめた。
「っちょ!なにするの……(照)。」
あなたちゃんの顔が赤くなっていく。ただ、それに矛盾してあなたちゃんは大声を出す。
「っ――。」
その時、奏があなたちゃんの口を塞いだ。
「あなた。俺、お前が好き。」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。