呑み明かした次の日、あなたは誰よりも早く起きて朝の散歩をしていた。
行った場所はというと……
〘土手〙でした。
なんで土手かと言うと、ここはFischer'sの始まりだからです。
あなたは驚きな事にまだここに来たことがなかったことを思い出したのです。
そこでウオタミさんのツイート等で調べていくとこの土手にたどり着けたのです。
そこで何をするのかと思えば、病気が分かってからずっと歌ってなかったことに気づき、歌いに来たのであった。
そう言うとあなたは目を閉じ大きく背伸びをし、朝の空気を胸いっぱいに吸い込みました。
《スゥーッ》
そしてニコッとはにかみ『よしっ!』と気合いを入れ、歌い始めました。
その曲は今のあなたの心境を表しているかのような歌詞でした。
歌っている最中、涙を浮かべる瞬間もあった。
だが、その分『強くなれる!』『強くなる!』そう思い、歌いきったのです。
あなたが散歩に出てから2時間。
1番に目を覚ましたのはシルクだった。
シルクは隣にあなたがいない事に焦りメンバーを起こしました。
誰にも連絡が来てない状態に焦り、不安を感じ始めた瞬間、ンダホが大きな声を出した
そう言って見せてきたのは、ウオタミさんからの画像付きのリプラインでした。
その画像はというと……
土手で歌を歌ったりウオタミさんと一緒に写真を撮っているあなたの姿だったのです。
それを見たのと同時にシルクは一目散に家を飛び出した。
土手に着くとそこには凄く活き活きとして、笑顔で歌っているあなたの姿があったのです。
その姿を見たシルクは自然と涙が溢れてきました。
なぜかと言うと、シルクはあなたの歌声をもう聴くことはできないんだろう。と思っていたからです。
あなたが病気を知ってから歌うことを辞め、ずっと無理して笑っているのを気にしていました。
あなたの歌声を聴いたのは約2年半振り。
その頃と比べると声量、声のオクターブは少し下がってしまっていたが真っ直ぐさ、暖かさ、気持ちの込め方は変わらずそのままだったのです。
シルクの涙は止まらず、でもずっとその姿を見つめていた。
そして他のメンバーがやってきました。
全員が揃ってシルクが見つめる視線の先を見ると、あなたの姿があるのに気づいた。
するとやはり他のメンバーも自然と涙を流していた。
歌うことの楽しさを忘れてしまっていたあなた。
歌うことの幸せを忘れてしまっていたあなた。
歌うことの喜びを忘れてしまっていたあなた。
思い出す事が出来たんだね。
あなたの歌っている姿を見た全員が揃ってそう思った事でした。
それから数十分が経ち、あなたは今まで歌えなかった分を歌い切ってスッキリしたかのようにまた目を閉じ、《スゥーッ》と息を吸い満面の笑みを浮かべました。
その時を待っていたかのように、Fischer's全員が声を揃え
と声をかけたのです。
その笑顔は歌う事の気持ち良さを思い出したんだな!と言わんばかりの笑顔でした。
それに気づいたあなたは、知らないうちにみんながいる事に驚いた顔を浮かべたがすぐに笑顔になり、こう言ったのです。
そしてシルクはまた涙目になったがすぐに拭い、あなたの横に並びいきなり叫んだのです。
それを聞いたあなたは顔を真っ赤にして照れたが答えるかのように大きく呼吸をし、シルクに負けないぐらいの大声で
そう言って2人は見つめ合い、大きな瞳に涙を浮かべ、白い歯を見せるかのように笑い見つめ合いメンバーの元へと向かったのです。
それから5年が経ち。
あなたとシルク、Fischer'sメンバーは歌動画にコラボ動画、様々な動画を撮っていき、さらに人気者になって行きました。
そして2023年、2月25日。
Fischer's結成13周年のこの日、シルクとあなたは入籍をし、あなたの名字は長岡から『絹張』に変わったのでした。
❦ℯꫛᎴ❧
(。-ω-。)----------------------キリトリ線----------------------(。-ω-。)
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!