__翌朝。
寝不足で重たい目を擦りながら、教室のドアを開けると すでに前の席の彼女は来ていた。
「おはよう」
「…おはよ。理沙」
「何か…眠そうだね」
「昨日あんまり寝れなくてさ…」
リュックを机のフックに掛け、椅子に腰掛ける。
「大丈夫?」
「うん。ありがとう」
彼女と話をしながらおもむろに机の中に手を入れると、何か紙が入っていることに気づいた。
普段 何もない状態にしてから帰るのに、何か忘れていっただろうか。
違和感を覚えた私は 二つ折りになった紙を取り出し、机の下で開いた。
何となく…嫌な予感がしたからだ。
「…あなた?」
手紙は、やはり“彼”からのものだった。
「どうしたの?…顔、真っ赤だよ」
「…え?あ、いや…何でもない」
私は紙を握りしめ、窓の外へ視線を移す。
高鳴る胸を落ち着かせようと 何度か深呼吸を繰り返したが、大して意味はなかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!